「大人」に徹した台湾新総統「蔡英文」の就任演説

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2016年5月21日
エリア: 中国・台湾

 5月20日、台湾の総統に、白いスーツ姿の蔡英文・民進党主席が就任した。総統としての正式名称は「中華民国第14代総統」である。台湾を国として報じられない日本の新聞・テレビでは紹介されることのない名称だが、その就任式典は、紛れもなく「中華民国」の儀式であり、ネットの中継を眺めていて興味深い点がいくつもあった。

 

継承された「2つの国璽」

 3時間にわたって生中継された就任式典のなかで、特に私が目を引かれたのが、孫文の肖像と中華民国国旗に向けて宣誓文を読み上げた後、蔡英文が中華民国の「国璽(こくじ=国家の印章)」を受け取るところだった。国民党の馬英九総統が「前総統」と呼ばれたのは、この国璽を蔡英文が受け取って式典を終えてからだった。

 実は、台湾には2つの国璽がある。1つは「中華民国之璽」で、もう1つは「栄典之璽」である。どちらも国家権力の象徴であり、政権の継承を意味するものだ。前者は深い緑をたたえた翡翠で出来ており、重さ3.2キロある。国書や批准書、領事証書などの外交文書に使われる。後者は勲章などに用いられ、白く輝く羊脂玉で出来ており、重さは4.3キロある。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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