北朝鮮・核搭載ミサイルの衝撃(下)ICBM保有しても「体制の保証」なし

執筆者:平井久志 2016年9月26日
エリア: 北米 アジア

 北朝鮮が核実験を行った時、朴槿恵(パク・クネ)大統領はラオス訪問中であった。予定を少し早めて帰国した朴大統領は9月9日夜、青瓦台で開いた安保状況点検会議で「権力維持のために国際社会と周辺国のいかなる話も聞かない金正恩(キム・ジョンウン)の精神状態は統制不能とみなければいけない」と非難した。朴大統領の怒りは分かるが、国家元首の発言としては少し疑問を感じる発言だった。金正恩党委員長の精神状態が「統制不能」と言ってしまうことは、韓国をはじめ国際社会は対応のしようがないと認めるようなものだからだ。最近の朴大統領の発言は、北朝鮮の状況を正確に指摘すると言うよりは、自らの願望や怒りを生の形ではき出しているようで危なっかしい。さらに、政権幹部が大統領に歩調を合わせ過激な発言を繰り返している。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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