台湾・故宮南院「十二支像撤去」で考える「政治と文化」の関係

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2016年10月5日
エリア: 中国・台湾
昨年12月の開館式典で並ぶ馬英九総統(当時)とジャッキー・チェン(C)AFP=時事

 

 しばしば博物館や美術館のトップが「文化は文化、政治は政治」という類いのきれいごとを語るたびに、いささか辟易とさせられてしまう。公共博物館は政府の予算で設置され、館長らの人事も政治家が決める。博物館はしばしば建国の理念を体現することも多く、「革命」や「戦勝」の成果を見せつける場にもなる。文化は政治から逃れられない。時に政治は文化を育てるが、時に政治が文化を破壊することも文化大革命の例から明らかである。

 

ジャッキー・チェンのプレゼント

 そんな微妙な政治と文化の関係を考えるには、中国の歴代王朝が集めた文物を収蔵・展示している故宮ほど、ふさわしい場所はない。

 台湾の故宮博物院(台北故宮)にとって初めての分院である「南院」が昨年12月にオープンした際、その目玉として設置されたのが、干支にちなんだ12種類の動物の頭部を模した「十二支像」だった。その十二支像は、開館セレモニーに招かれた香港の映画スター、ジャッキー・チェンが特注して台湾側に贈呈したもので、南院の正面に堂々と12頭の動物たちの頭部が並んだ。だが、この十二支像を、台北故宮は先月末、この南院から近く撤去する方針を固めたことを明らかにした。理由は「公共芸術として芸術性が不十分である」というものだが、要するに、故宮の表看板としてはふさわしくなかった、ということである。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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