2017北朝鮮「新年の辞」(上)「ICBM」はどこまで進むか

平井久志
執筆者:平井久志 2017年1月12日
エリア: 北米 朝鮮半島

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)党委員長は元日に今年の基本路線を示す「新年の辞」を発表した。金正恩党委員長は、「大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試験発射の準備が最終段階に入った」と述べ、「核武力を中枢とする自衛的国防力と先制攻撃能力を引き続き強化していく」とし、核・ミサイル開発を継続すると表明した。
 南北関係では、朴槿恵(パク・クネ)大統領を呼び捨てにし「反統一的な事大主義的売国勢力」と決め付けた上で、昨年来の韓国での朴槿恵大統領退陣運動を高く評価し「全民族的な統一大進軍を速める」と訴えた。
 一方で金正恩党委員長は演説で人民に頭を下げ、最後の部分で自己批判までする異例の姿勢をみせた。金正恩党委員長の思惑はどこにあるのだろうか。

トランプ氏は「あり得ない」と言及

 金正恩党委員長の「新年の辞」にいち早く反応したのはトランプ次期米大統領だった。トランプ氏は1月2日にツイッターで、北朝鮮が核弾頭を搭載したミサイルで米本土を攻撃する能力を保有する可能性について「そのようなことは起きない(It won’t happen!)」と投稿した。
 トランプ氏のツイッター政治が危ういのは、重要な発言に何の補足説明もないことだ。「そのようなことは起きない」というのが何を意味するのか不明だ。軍事的な手段を動員しても北朝鮮のそうした試みをつぶすつもりなのか、単に北朝鮮の核・ミサイル水準がそのレベルに達していないことを言っているのか、金正恩体制が長続きしないと考えているのか、それとも北朝鮮と交渉してそういう事態を防ぐことなのかが、分からない。
 トランプ氏が北朝鮮の核・ミサイル状況をどの程度理解しているのかも分からない。トランプ氏は、ある種の「モンロー主義」により国際紛争への介入を避けるのではないかとみられており、外交の優先課題は対中関係や中東問題、さらにはロシアとの新たな関係設定になり、北朝鮮核問題は後回しになるのではという見方も多い。
 一方で、ロイター通信はトランプ氏が昨年12月に情報機関に要求して受けた最初の機密情報のブリーフィングは北朝鮮の核問題だったと報じた。そうした情報に接した上での、ツイッター発言だとすれば「そのようなことは起きない」という発言は、トランプ氏が北朝鮮の核問題を優先課題と捉えているようにも見える。文脈的には北朝鮮に強硬姿勢で対応し、そういう事態は許さないというニュアンスを感じる。

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執筆者プロフィール
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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