【ブックハンティング】「シリコンバレー」で感じるアメリカ社会への「危機感」

吉崎達彦
執筆者:吉崎達彦 2017年4月7日
エリア: 北米 日本
小林由美・著/新潮社(クリックすると購入サイトに)

 アメリカ社会の「格差」拡大を批判する声は近年、絶えることがない。5~6年前には「オキュパイ・ウォールストリート」運動が盛り上がったし、2年前にはトマ・ピケティの分厚い本がブームになった。昨年の大統領選挙では、「バーニー・サンダース旋風」が吹き荒れた。ただし格差を是正する動きは、ついぞ政治的なモメンタムを持ち得ずに今日に至っている。サンダース候補はヒラリー・クリントンの牙城を崩せなかったし、そのヒラリーも本選挙では「まさか」の敗北を喫してしまった。

結果として、第45代合衆国大統領にはドナルド・トランプが就任した。現大統領が提示する処方箋は、グローバリズムを否定し、海外に移転した企業を呼び戻し、製造業の復権を目指してアメリカを再び偉大にするというものである。ちょっと話が違うと思うのだが、とりあえずはそれが「2016年選挙で示された民意」ということになっている。

 本書もまた書名から、そのような「格差嘆き節」の一種だと思ったら意表を突かれるかもしれない。確かに今のアメリカ社会における格差は度を過ぎている。が、それを拡大させているのは、グローバル化や金融資本主義といったありきたりな犯人ではなく、むしろ日進月歩の技術革新である。本書は在米生活36年の日本人アナリストが、「シリコンバレーに暮らしていて日々感じる危機感」が基になっている。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
吉崎達彦 双日総合研究所チーフエコノミスト。1960年(昭和35年)富山市生まれ。一橋大学社会学部卒業後、1984年日商岩井(現双日)に入社。米国ブルッキングス研究所客員研究員、経済同友会調査役などを経て現職。新聞・経済誌・週刊誌等への執筆の他、「サンデープロジェクト」等TVでも活躍。また、自身のホームページ「溜池通信」では、アメリカを中心に世界の政治経済について鋭く分析したレポートを配信中。著書に『溜池通信 いかにもこれが経済』(日本経済新聞出版社)、『1985年』(新潮新書)など、共著に『ヤバい日本経済』(東洋経済新報社)がある。
comment:4
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順