中東―危機の震源を読む (93)

イラク・モースルの中央モスク陥落は「イスラーム国」を終わらせるか

執筆者:池内恵 2017年6月30日
エリア: 中東

 イラクのアバーディー首相は6月29日、北部の最大都市モースルの中央モスク(ヌーリー・モスク)を制圧したのに合わせて声明を出し、「イスラーム国」の「国家」としての終焉を宣言した。

"Iraq army seizes ruins of Mosul mosque from ISIL," Al-Jazeera, June 29, 2017.

中央モスク奪還の象徴的意味

「イスラーム国」のモースルの支配と、モースルを「首都」としてイラク北部・西部での領域支配や擬似国家的統治は、今年に入ってからのイラク中央政府とクルド地域政府(KRG)、あるいはイラク政府を支援する民兵組織などの攻撃によって縮小しており、実質上すでに機能していないと言っていい。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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