マネーの魔術史 (52)

占領地での戦費は軍票で調達された

執筆者:野口悠紀雄 2018年5月24日
タグ: 中国 香港 日本
エリア: アジア
(C)AFP=時事
 

 

 第2次世界大戦が進行するにつれて、占領地域において使用される戦費の割合は増大していった。これを賄うため、旧日本軍はアジアの占領地域で軍票を用いて戦費調達を行った。

 軍票は、軍隊が現地における物資調達やその他の支払いのために発行する擬似紙幣である。正式には軍用手票と言われる。

 占領地で自国通貨を使用すると通貨供給量が増加し、インフレーションがもたらされる恐れがある。これを防ぐため、占領地の経済を本国経済から切り離す目的で軍票が用いられる。

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執筆者プロフィール
野口悠紀雄(のぐちゆきお) 1940年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、大蔵省入省。1972年エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授などを経て、現在、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論。1992年に『バブルの経済学』(日本経済新聞社)で吉野作造賞。ミリオンセラーとなった『「超」整理法』(中公新書)ほか『戦後日本経済史』(新潮社)、『数字は武器になる』(同)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞社)、『マネーの魔術史』(新潮選書)、『AI時代の「超」発想法』(PHPビジネス新書)など著書多数。公式ホームページ『野口悠紀雄Online』【http://www.noguchi.co.jp
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