マネーの魔術史 (55)

第2次世界大戦の教訓は、いまの日本で忘れられた

執筆者:野口悠紀雄 2018年6月15日
エリア: アジア
(C)AFP=時事

 

 マネーはあらゆる経済活動の背後にあるが、特に戦時においては、極めて重要な役割を果たす。マネーを増発することによって戦費を調達できるからだ。負担はインフレーションという形で生じるので、政府は返却する必要はない。

 これまで見てきたように、ナポレオン戦争、アメリカ独立戦争、南北戦争を通じて、戦費調達におけるマネーの役割が高まった。

 19世紀に、イギリスがリードして世界的な金本位制が確立され、政府が安易にマネーに頼ることはできなくなった。しかし、金本位制は、第1次世界大戦で停止された。大戦後に復活が試みられたが、成功しなかった。

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執筆者プロフィール
野口悠紀雄(のぐちゆきお) 1940年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、大蔵省入省。1972年エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授などを経て、現在、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論。1992年に『バブルの経済学』(日本経済新聞社)で吉野作造賞。ミリオンセラーとなった『「超」整理法』(中公新書)ほか『戦後日本経済史』(新潮社)、『数字は武器になる』(同)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞社)、『マネーの魔術史』(新潮選書)、『AI時代の「超」発想法』(PHPビジネス新書)など著書多数。公式ホームページ『野口悠紀雄Online』【http://www.noguchi.co.jp
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