「フクシマ」が吹き飛ばした世界の原発ブーム

執筆者:新田賢吾 2011年4月5日
エリア: 日本

 東京電力の福島第一原子力発電所の事故は、出口のみえない状況が今なお続いている。世界で最も安全の水準が高いと思われていた日本の原発で起きた事故は、大地震と大津波が原因とはいえ、世界に衝撃を与えた。今や、原子力発電そのものへの懐疑が世界に広がった。この数年の原子力ブームは一気に冷めた。先進国の「原子力ルネッサンス」は色あせ、新興国、途上国は経済成長に伴って急激に伸びる電力消費を賄う中心的な電源として期待していた原子力の位置づけに迷い始めている。
 福島第一原発の事故は、原発の安全性を担保してきた「冷やす」という機能の喪失の恐ろしさをまざまざと見せつけるとともに、原発に付随する使用済み核燃料プールも原子炉と並んで大きな危険性をはらんでいることを示した。すなわち、現在世界に広がっている商業用原子炉の多面的なリスクが改めて顕在化したわけである。

沸騰水型軽水炉では初めての大事故

 福島第一原発は、今問題となっている1号機が米ゼネラル・エレクトリック(GE)、2号機はGE・東芝、3号機は東芝、4号機は日立製作所が、それぞれ主契約社となって建設した。原子炉の形式で言えば、沸騰水型軽水炉(BWR)である。加圧水型軽水炉(PWR)と並んで世界の商業用原子炉を2分している炉だ。1-4号機はその中でも最も古いタイプの「マークⅠ」と呼ばれるもので、格納容器の形状をとって、俗に「フラスコ」とも称される。
 これまで世界で起きた原発の大事故は1979年の米ペンシルベニア州のスリーマイル島原発2号機(発電能力95.9万キロワット)事故、1986年の旧ソ連のチェルノブイリ原発4号機(100万キロワット)事故、そして福島は3件目にあたるが、炉型は3件とも異なる。スリーマイル島原発はPWR、チェルノブイリは黒鉛減速軽水炉で、福島はBWRとしては初の大事故となった。旧ソ連圏で盛んに建設された黒鉛減速炉はもはやほとんど使われなくなったが、PWR、BWRは世界各地でなお運転され、新設が続いている原子炉であるだけに、世界のどの地域の人にとっても関わりの深い、考えようによっては身近な事故であった。しかも福島第一原発の事故は、安全対策が行き届いていると信じられていた日本で起きただけに、原発不信は深まった。

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