中東―危機の震源を読む
中東―危機の震源を読む(82)

エジプト新憲法制定の行方──新体制への「一般意思」は示されるか

池内恵
執筆者:池内恵 2012年12月14日
カテゴリ: 国際
エリア: 中東

 

 賛成派と反対派のそれぞれがデモを繰り広げている(写真は11月27日のタハリール広場)(c)EPA=時事
賛成派と反対派のそれぞれがデモを繰り広げている(写真は11月27日のタハリール広場)(c)EPA=時事

 エジプトの新憲法草案への賛否を問う国民投票が12月15日に行なわれる予定だ。そこに向けて、ムルスィー大統領・ムスリム同胞団の与党勢力と、リベラル派と旧体制支持派を中心とする反ムルスィー・反ムスリム同胞団勢力との対立が激化している【「分裂したエジプト──国民投票への賛成と反対それぞれが人々を動員」アハラーム・オンライン12月11日】

 

「アラブの春」の開始から間もなく2年を迎えるが、エジプトで新憲法制定がなされ、新体制設立が実現するのか、あるいはいったん立憲過程が停滞し、諸勢力間の対話が試みられるのか、あるいは大規模な混乱・衝突が生じ、軍の介入によってプロセスそのものが中断あるいは振り出しに戻るのか。様々な可能性がありうる。投票日に向けて緊張が高まる。

 

「立憲過程」をめぐる争い

 

 対立の焦点はムスリム同胞団主導による立憲過程の推進を認めるか否かである。そこに司法による政治介入の問題が絡んで、法的・政治的な「ねじれ」が随所に存在することで、紛糾している。

 ムルスィー大統領は11月22日の大統領令・憲法宣言によって、司法の違憲立法審査権を一時的に停止し、司法の介入によって立憲過程が振り出しに戻る可能性を未然に阻止した。この荒業によって立憲過程を次の段階に進めようとしたものの、リベラル派と旧体制支持派はこれに対抗して結集し、街頭で大規模で強硬な抗議行動を組織して、政権打倒と立憲過程の停止を唱導した。しかしムスリム同胞団側も同様の規模の動員を行なって対峙している。反政府デモによって政権の正統性が失われ退陣につながるという、ムバーラク政権末期に生じた政権崩壊過程が再来することは想定できない。むしろ対立するデモ隊の間の衝突による、状況の流動化が危惧される。

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執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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