中東―危機の震源を読む
中東―危機の震源を読む(83)

「アサド後」の混沌をどう回避するか(シリア内戦2)

池内恵
執筆者:池内恵 2012年12月17日
カテゴリ: 国際
エリア: 中東
 いつ急激な政権崩壊が生じてもおかしくない段階に(11月23日、イランのラリジャニ国会議長=左=と会談するアサド大統領)(c)AFP=時事
いつ急激な政権崩壊が生じてもおかしくない段階に(11月23日、イランのラリジャニ国会議長=左=と会談するアサド大統領)(c)AFP=時事

 シリアでアサド政権の崩壊過程が加速している。首都ダマスカスへの反体制派の攻勢が続いており、政権側は用いる軍事的手段をエスカレートさせながらも撃退できないでいる。これまではアサド政権側が、反体制勢力の掌握した都市や街区を包囲して攻撃を加える形で主要な戦闘が行なわれてきたが、徐々に形勢は逆転し、首都ダマスカスやアレッポでも反体制勢力がむしろ包囲して攻勢に出る段階に入っている。大量の武器を蓄えて結束を固めるアサド政権の中枢が結束して戦闘を持続することは可能だが、正統的な政権として全土の支配を取り戻すことはもはや困難な情勢である。

政権崩壊は「第一幕」に過ぎない

 アサド政権側は反体制側の掌握地域に対して、戦闘機による爆撃やミサイル攻撃を行なって多数の住民の殺害を繰り返すのみであり、人心を再び掌握することは困難である。アサド政権は「最強の民兵集団・アサド派」として一定期間シリアの一部地域を掌握することは可能であっても、「政権」としての実体を存続させることは望み薄になってきている。アサド政権の頑健性を強気で主張してきたロシアからも弱気の発言が出るようになっており、急激な政権崩壊がいつ生じてもおかしくない段階に入っている。

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執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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