「1秒先」を生きる選手

星野 智幸
執筆者:星野 智幸 2013年10月29日
カテゴリ: スポーツ 国際
エリア: ヨーロッパ 中南米

 その周りだけ違う時間が流れているんじゃないか、と思わせる選手がいる。その選手だけが1秒先の未来に生きていて、1秒先のボールの行方を見ている。だから、一足先に相手のパスをカットできたり、相手の虚を衝くパスを出すことができる。

 例えば、澤穂希。2011年の女子ワールドカップ優勝は、澤がそれまでのトップ下のポジションからボランチにコンバートされたことから始まった。佐々木則夫監督は、澤の「ボールを奪うという才能」「嗅覚の鋭さ」を買ってボランチに起用することで、やがて世界の女子サッカー界の価値観を揺るがす新しいパスサッカーを実現させることができた。

 なぜ澤にはそんな嗅覚があるのか。澤は佐々木監督にこう答えたという。

「攻撃したいから、相手のボールを奪いたい。どうすれば上手くインターセプトできるかは考えていないけれど、攻撃するためにはまずボールを取らなくちゃ、とは常に思っている」(佐々木則夫『なでしこ力』講談社文庫)。

 

澤のボール奪取能力

 翌2012年のロンドン五輪準優勝以降、なでしこ代表は新たな次元のチーム作りに苦しんでいる。世界が日本を徹底的に研究し尽くしていることも原因だが、澤が調子を落としていたことも影響していた。

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執筆者プロフィール
星野 智幸
星野 智幸 作家。1965年ロサンゼルス生れ。早稲田大学第一文学部を卒業後、新聞記者をへて、メキシコに留学。1997年『最後の吐息』(文藝賞)でデビュー。2000年『目覚めよと人魚は歌う』で三島由紀夫賞、2003年『ファンタジスタ』で野間文芸新人賞、2011年『俺俺』で大江健三郎賞を受賞。著書に『ロンリー・ハーツ・キラー』『アルカロイド・ラヴァーズ』『水族』『無間道』などがある。
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