3.11から3年(下) 光は外から――      共同体の崩壊と再建

執筆者:吉野源太郎 2014年3月28日
エリア: 日本

 福島では今、県外から来た専門家の応援部隊が様々な場所で地道な活動を始めている。その事実はあまり知られていないが、彼らはきわめて重要な役割を担っている。東京電力支配下で温存されてきた村落共同体的社会の閉鎖性、前近代性との闘いである。汚染され、空洞化しつつある旧来の共同体に代わり、福島の未来を構築する―――。高度な専門性に加え、科学的、合理的知見と、被災した住民の生活をまるごと引き受ける人間性が求められる、壮大な闘いである。

 新婚の夫を東京に残して単身赴任している平岡弁護士(筆者撮影、以下同)
新婚の夫を東京に残して単身赴任している平岡弁護士(筆者撮影、以下同)

 日本弁護士連合会が司法過疎地の解消をめざして全国に展開している「ひまわり基金法律事務所」。福島県相馬市の同事務所に単身赴任して所長を務める平岡路子弁護士は言う。

「この地域には、もともと法律に照らしてものごとを考える習慣がない」

 だからここでは、弁護士の仕事は、具体的な紛争解決の交渉以前に、普遍的な法やルールの重要性を説くことから始めねばならないという。「村」の慣習より、近代的な法の基準を優先すべきこと、社会正義に照らしてものごとを考える必要を説く、いわば一種の啓蒙活動である。

 従来、ここでは法に代わって地域を支配してきたのが村落共同体的規範であった。戦後も封建制を色濃く残した福島の共同体に君臨してきた支配者を仮に「村長(むらおさ)」と呼ぶとすれば、福島の苦悩は、東電こそが近現代の村長だったことにある。

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執筆者プロフィール
吉野源太郎 ジャーナリスト、日本経済研究センター客員研究員。1943年生れ。東京大学文学部卒。67年日本経済新聞社入社。日経ビジネス副編集長、日経流通新聞編集長、編集局次長などを経て95年より論説委員。2006年3月より現職。デフレ経済の到来や道路公団改革の不充分さなどを的確に予言・指摘してきた。『西武事件』(日本経済新聞社)など著書多数。
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