中東―危機の震源を読む
中東―危機の震源を読む(87)

「イスラーム国」問題へのトルコの立場:「安全地帯」設定なくして介入なし

池内恵
執筆者:池内恵 2014年10月17日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障
エリア: 中東 北米

  対「イスラーム国」の空爆をイラクからシリアへと拡大してから1カ月が過ぎた。「イスラーム国」の大規模な武器集積施設の破壊により、支配地域の急速な拡大の阻止には役立っているとされるが、当初の予想通り、地上軍の派遣なしに「イスラーム国」の打倒は困難な見通しだ。米国のあからさまな地上軍派遣は、依然として米国の国内で多数の支持を得られない模様であり、現地と周辺諸国の同盟国・同盟勢力を募ることが急務だが、それがうまくいっていない。焦点となっているのがトルコの動向だが、トルコはシリア北部に飛行禁止区域を設定し安全地帯を設けることを米主導の多国籍軍の軍事行動への参加の条件としている。当面は米国がこれを認めそうにない。ここからNATO(北大西洋条約機構)にも当初から参加し、米国にとって中東で不可欠な同盟国であるトルコとオバマ政権の間に深刻な亀裂が入っている。

 対シリア空爆への参加をひっきりなしに催促する米国に対して答えるかのように、トルコは10月13日に空爆を行った。ただし目標はシリア北部ではなく、トルコ南東部のクルド武装勢力に対してだった。トルコにとっての最重要課題はクルド人武装勢力であって「イスラーム国」ではない、という、米国に対する強烈な回答と言えよう。

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執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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