吉田調書を読み解く(中)羽音におびえた「9割退避」

 吉田所長自身も大津波のリスクを認識していたことが調書からは読み取れる(C)時事
吉田所長自身も大津波のリスクを認識していたことが調書からは読み取れる(C)時事

 この桁外れの憤怒は、どこから湧いてきて、本当はどこに向けられたものなのだろう。

 地震・津波から4日目、2011年3月14日夜から、福島第1原発で持ち上がった「全員撤退」騒動をめぐる、調書での吉田昌郎所長(当時、昨年7月死去)の発言は、驚くほど直截で激しい。

 かいつまんで紹介する。

 

質問者「撤退という言葉を使いましたか」

吉田所長「使わないです。撤退みたいな言葉は、菅が言ったのか、誰が言ったか知りませんけれども、そんな言葉使うわけないんですよ」

質問者「今はあまり言っていないんですが、菅さんは、自分が東電が逃げるのを止めたんだみたいな」

吉田所長「辞めた途端に。あのおっさんがそんなのを発言する権利があるんですか。あのおっさんだって、事故調の調査対象でしょう。そんなおっさんが、辞めて、自分だけの考えをテレビで言うのはアンフェアも限りないんで、事故調の委員会としてもクレームをつけないといけないんではないかと」

質問者「この事故調を(菅直人元首相は)自分でつくっているんでしょう」

吉田所長「私も被告ですなんて、偉そうなことを言っていたけれども、被告がぺらぺらしゃべるんじゃない、馬鹿野郎と私などは言いたいですけれども、どうでしょう。議事録に書いておいて」

執筆者プロフィール
塩谷喜雄 科学ジャーナリスト。1946年生れ。東北大学理学部卒業後、71年日本経済新聞社入社。科学技術部次長などを経て、97年より論説委員。コラム「春秋」「中外時評」などを担当した。2010年9月退社。
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