安倍訪米後の「新時代」日米関係(下)「経済を超える」TPP の意義

武内宏樹
執筆者:武内宏樹 2015年6月3日
エリア: 北米

 前回(2015年5月23日「安倍訪米後の『新時代』日米関係(中)一段踏み込んだ『同盟』」)は「安全保障」に焦点をあてて日米関係を考察したが、今回は4月の日米首脳会談のもうひとつの柱であった「環太平洋経済連携協定」(Trans-Pacific Partnership: TPP)について議論してみたい。
 安倍首相は米国議会での演説で、「TPP は経済的利益に留まるものではなく、安全保障上の意義もあり、長期的な戦略的価値は計りしれない」(The TPP goes far beyond just economic benefits.  It is also about our security.  Long-term, its strategic value is awesome)と明確に述べた。それでは、TPP の意義、とくに経済的利益を超えた意義とは何であろうか。
 筆者は、TPP には「経済」(economy)、「戦略」(strategy)、「安全保障」(security)という3つの側面があると考えている。経済的側面から見れば、TPP によってアジア太平洋地域の貿易が促進されることで、各国の経済が成長し、雇用が増え、とくに消費者と輸出関連産業は恩恵を被る。戦略的側面から見れば、TPP によってアジア太平洋地域に国際経済のルールが作られることで、「ルールに基づいた米国主導の国際秩序」(rule-based US-led international order)を強化し、米国主導の国際秩序に挑戦する中国に対応するのが容易になる。安全保障の側面から見れば、将来のTPP 参加に意欲を見せている中国に、その条件として「真の経済改革」を迫るという「外圧」をかけることで、国内政治における改革派を支援し、協調的な外交政策を採る動機付けを与えることができる(2014年8月18日「『中国の視点』から考えるTPP の政治経済学」参照)。以下では、TPP の意義を、これら3つの側面に分けて考えてみたい。

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執筆者プロフィール
武内宏樹
武内宏樹 サザンメソジスト大学(SMU)政治学部准教授、同大学タワーセンター政治学研究所サン・アンド・スター日本・東アジアプログラム部長。1973年生れ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)博士課程修了、博士(政治学)。UCLA 政治学部講師、スタンフォード大学公共政策プログラム講師を経て、2008年よりSMUアシスタント・プロフェッサーを務め、2014年より現職。著書に『党国体制の現在―変容する社会と中国共産党の適応』(共編著、慶應義塾大学出版会、2012年)、Tax Reform in Rural China: Revenue, Resistance, Authoritarian Rule (ケンブリッジ大学出版会、2014年)。ほかに、International Relations of the Asia-Pacific、Japanese Journal of Political Science、Journal of Chinese Political Science、Journal of Contemporary China、Journal of East Asian Studies、Modern Chinaなどに英語論文を掲載。専門は、中国政治、日本政治、東アジアの国際関係及び政治経済学。
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