国際論壇レビュー

「中国のカネ」に目が眩んだ「英国への失望」

 10月は大国間の大きな「戦略的」動きがくっきりと見えた月だった。

 日米など12カ国による環太平洋経済連携協定(TPP)が、5年半に及んだ難交渉の末まとまった。と、思いきや、中英が7兆円超という経済協力で合意した。中国は英国で原発を建設、国外で初の人民元建て国債発行をロンドンで始める。「一帯一路」と呼ばれる中国の新シルクロード構想と密接につながる動きだ。

 TPPが日米を軸とする経済大戦略なら、「一帯一路」は欧州とつながろうとする中国の大戦略だ。

 その中国の南シナ海での強引な海洋進出に対し、アメリカが「待った」をかけた。中国が人工島をつくり、12カイリの「領海」を主張する海域に、イージス駆逐艦を送り込み航行させた。中国の有無を言わせぬ海洋進出に抗議はすれども、なす術もなかった近隣諸国は快哉を叫び、溜飲を下げたが、さて、このあとアメリカはどう進むのか……。

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執筆者プロフィール
会田弘継(あいだひろつぐ) 関西大学客員教授、ジャーナリスト。1951年生まれ。東京外語大英米語科卒。共同通信ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを務め、現在は共同通信客員論税委員、関西大学客員教授。近著に『世界の知性が語る「特別な日本』』 (新潮新書)『破綻するアメリカ』(岩波現代全書)、『トランプ現象とアメリカ保守思想』(左右社)、『増補改訂版 追跡・アメリカの思想家たち』(中公文庫)など。訳書にフランシス・フクヤマ著『政治の衰退』(講談社)など。
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