「遊民経済学」への招待
「遊民経済学」への招待(20)

スターウォーズに触発されて「遊民銘柄」を選ぶ

吉崎達彦

 映画というのは不思議と後を引くものである。前回の『007/スペクター』に引き続き、今度は封切り直後で満員御礼の『スター・ウォーズⅦ フォースの覚醒』を見てきた。それにしても、流山おおたかの森「TOHOシネマズ」が満席になるなんて、初めて見ましたですよ。
 結論を言ってしまうと、満足度は極めて高かった。1点だけネタバレをお許し願うと、劇中でハリソン・フォードが登場するシーンがある。その瞬間、観客が思わず「おおっ!」とどよめく。映画館によっては、同時に拍手が湧き上がるらしい。
 1977年の初演から38年を経て登場したハン・ソロは、さすがに年輪を重ねている。その姿は、われわれ見ている側にも同様に経過した時間の長さを感じさせる。そう、最初に『スター・ウォーズⅣ 新たなる希望』を封切りで見たとき、筆者は高校生で、それは富山市内の今は無き「タカラ劇場」であった。それから何と長い月日が流れたことか。ハリソン・フォードは「インディ・ジョーンズ」他のさまざまな役柄を経て、今もハリウッドの最前線で活躍している。当方はいい年をしたオヤジになり、映画館があった辺りは今ではシャッター街になっている。

全国一斉公開を前に、エイブラムス監督と主要キャストが来日、記者会見した。(C)EPA=時事

 そんなくらいだから、懐かしいキャラたちと再会した途端に、「いやもうアナタ、よくまあご無事で」と無条件で眼がうるうるしてしまう。到底、普通の映画として評価することは出来なくなっている。正直な所、『フォースの覚醒』はエピソードⅣからⅥのキャラやアイデアが使い回しされているし、だいたい見る側が予想している通りの展開になるし、エンディングの余韻も「まあ、こんなところでしょうね」である。とにかく「裏切られた」という感じはしない。この調子だと、きっと次作も見てしまうだろう。
『スター・ウォーズ』を初めて見る観客であったら、なんのことだかよくわからないままに終わってしまうかもしれない。が、そういう人はきわめて少ないはずなので、製作者側としては作戦成功なのであろう。察するにJ.J.エイブラムス監督は、「いっちょジョージ・ルーカスの鼻を明かしてやろう」などという冒険心を起こさず、どうしたら観客がご機嫌になって帰ってくれるかを最優先に考えて、この映画を撮ったものと見える。
 意地悪ついでに言うと、この映画は史上最高興収の『アバター』(27.9億ドル/2009年)を抜くかどうかが注目されている。たぶん無理なんじゃないかと筆者は踏んでいる。なにしろ今の映画ビジネスは、アメリカ国内の売り上げは3割程度である。成功不成功は海外での反響に懸っていて、特に大票田は中国市場である。ところが中国では、エピソードⅣからⅥが公開されていない。われわれが最初の『スター・ウォーズ』に熱中していた頃、彼らは高倉健主演の『君よ憤怒の河を渉れ』に感動していたのだ。

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執筆者プロフィール
吉崎達彦
吉崎達彦 双日総合研究所チーフエコノミスト。1960年(昭和35年)富山市生まれ。一橋大学社会学部卒業後、1984年日商岩井(現双日)に入社。米国ブルッキングス研究所客員研究員、経済同友会調査役などを経て現職。新聞・経済誌・週刊誌等への執筆の他、「サンデープロジェクト」等TVでも活躍。また、自身のホームページ「溜池通信」では、アメリカを中心に世界の政治経済について鋭く分析したレポートを配信中。著書に『溜池通信 いかにもこれが経済』(日本経済新聞出版社)、『1985年』(新潮新書)など、共著に『ヤバい日本経済』(東洋経済新報社)がある。
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