クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

「児島惟謙」がいなかった国

執筆者:徳岡孝夫 2016年1月11日
エリア: アジア

 どこにその境界があるかと問われてここだよと示すのは難しいけれども、人がそうであるように、品格のある国とない国がある。

 一昨年4月のことだが、韓国南西部の海で集団旅行の高校生を乗せたフェリーが転覆・沈没し、300人近くの死者を出した。ソウルでは、救助その他の指揮を執るべき朴槿恵大統領の所在がハッキリせず、元側近の男と密会していたという噂が立った。
 中国の古諺に曰く、舌(つまり噂)は、4頭立ての馬車でも追いつかないという。ソウル政界のヒソヒソ話は、たちまち「その筋」の間で公然の秘密になって出回った。
 話は「朝鮮日報」のようなソウルの有力紙にも出たという。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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