国際論壇レビュー
国際論壇レビュー

米大統領選で浮かび上がった「格差」と「政治言語」問題

会田弘継
執筆者:会田弘継 2016年2月9日
エリア: 北米 中国・台湾

 聞くところによれば、某大手全国紙の「ドン」と呼ばれる御仁は、昨年正月には当時論壇を賑わせていたトマ・ピケティの『21世紀の資本』を「徹底的に批判せよ」と檄を飛ばし、今年正月には「言ったとおり、もうピケティなどみんな忘れたろう」とうそぶいたそうだ。なるほど熱しやすく冷めやすい日本人はそうだろう。だが、「ドン」は国際論壇とはまったく無縁なところで日々を過ごしておられるらしい。

『21世紀の資本』とそこで論じられる格差問題が欧米論壇の焦点の1つになったのは日本語版が出る1年以上前、そして米国で発行される世界的な外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』の本年第1号の特集は依然「格差(inequality)」である。

 さらに昨年末の本欄(2015年12月29日「『トランプ現象』で浮き彫りになった米社会の『地殻変動』」)で詳述したように、米大統領選の前哨戦でポピュリストの不動産王ドナルド・トランプや社会主義者バーニー・サンダースが躍り出た背景にも格差社会の中で沈み込む中産階級の問題が横たわっているのは、明らかだ。「格差」は世界が、特に「脱工業化」する先進諸国が取り組むべき大きな課題なのである。ピケティが著書で訴えた問題は、国際社会の息の長いテーマとなった。

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執筆者プロフィール
会田弘継
会田弘継 青山学院大学地球社会共生学部教授、共同通信客員論説委員。1951年生れ。東京外国語大学英米科卒。共同通信ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを歴任。2015年4月より現職。著書に本誌連載をまとめた『追跡・アメリカの思想家たち』(新潮選書)、『戦争を始めるのは誰か』(講談社現代新書)、訳書にフランシス・フクヤマ『アメリカの終わり』(講談社)などがある。
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