メルケル流「エルドアン大統領侮辱事件」のしのぎ方

佐藤伸行
執筆者:佐藤伸行 2016年4月20日
エリア: ヨーロッパ 中東

 昨年夏からの未曾有の難民・不法移民大量流入によって、ドイツ首相就任後の10年間で最大の政治的危機に直面していたメルケルだったが、この4月初めの段階では修羅場を乗り切った形になっていた。
 100万人に及ぶ難民・不法移民の殺到により、3月に実施されたドイツ国内3州の議会選では、反移民を掲げる右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進した。メルケル率いるキリスト教民主同盟(CDU)はいずれの州でも後退したものの、4月初めの世論調査では、メルケルの支持率は56%に上昇、難民危機勃発前の水準に回復した。その背景には、欧州連合(EU)とトルコの間で、EUがトルコ経由の不法移民をトルコに送還する合意が成立したことが大きく、メルケルは最悪の時期を脱したと目された。一時は40%前半にまで落ち込んだことを考えれば、メルケルは「復活」を宣言してもよいほどの支持率の回復だった。
 しかし、ここでまたメルケルに試練が襲いかかったかに見える。難民問題の「恩人」とも言えるトルコのエルドアン大統領に対する「叩頭外交」がドイツ国民にいたく不人気で、せっかく上向いてきた支持率が大きく落ち込んでいるのだ。
 エルドアンをめぐるメルケルへの逆風は一時的なもので、時間とともに収まっていくとの見方もあるが、来年秋の連邦議会(下院)選挙を控え、ドイツ各政党の駆け引きが強まっていることも問題を複雑化している。

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執筆者プロフィール
佐藤伸行
佐藤伸行 追手門学院大学経済学部教授。1960年山形県生れ。85年早稲田大学卒業後、時事通信社入社。90年代はハンブルク支局、ベルリン支局でドイツ統一プロセスとその後のドイツ情勢をカバー。98年から2003年までウィーン支局で旧ユーゴスラビア民族紛争など東欧問題を取材した。06年から09年までワシントン支局勤務を経て編集委員を務め退職。15年より現職。著書に『世界最強の女帝 メルケルの謎』(文春新書)。
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