メルケル4選を脅かす「SPDシュルツ」の強みは「低学歴」「中央政界経験なし」

佐藤伸行
執筆者:佐藤伸行 2017年3月8日
エリア: ヨーロッパ
ドイツ社会民主党の首相候補となったシュルツ前欧州連合(EU)欧州議会議長(C)EPA=時事

 首相メルケルの4選がかかる今年9月のドイツ総選挙(連邦議会選挙)に向け、強烈な旋風が巻き起こっている。12年ぶりに首相の座の奪回を目指す中道左派の社会民主党(SPD)が擁立した首相候補マルティン・シュルツ前欧州議会議長(61)が期待以上の人気を集め、メルケル再選を阻むかもしれない手ごわいライバルとして浮上してきたのだ。メルケルは、仮に次の総選挙で勝利して任期を全うすれば、在任16年となり、政治的師父であるドイツ統一宰相ヘルムート・コールの戦後最長記録に並ぶ。しかし、その道のりはやはり平坦ではなかった。

メルケルの衰え

 側頭部と後頭部を除いてきれいに禿げ上がった頭。もみあげからほほとあごに白髪交じりの無精なひげが続く。ぎょろりとした、それでいて愛嬌のある眼差しが印象的だ。シュルツの演説は情熱的でパンチが効いており、「情念なき平板な演説」と酷評されるメルケルとは好対照をなす。
「首相を狙えるSPDの候補がようやく出て来た」――。メルケル与党キリスト教民主同盟(CDU)との大連立によって政権与党の座にあるとはいえ、メルケルの陰で存在感が低下しているSPDの支持者は今、シュルツに大きなチャンスを感じ取り、心躍らせている。
 SPDがシュルツを首相候補に選出したのは今年1月下旬のこと。それまでSPDは大連立政権下で支持率が低迷し、20%台前半の低空飛行を続けてきたが、シュルツの登場で人気が急上昇し、約30%とCDUとほぼ横並びになった。それどころか、一部調査では一時、SPDの支持率が20年ぶりにCDUをやや上回るような結果も出た。
 こうした世論の動向は、首相候補選出後の「御祝儀相場」の要素もあり、シュルツ人気も御多分に漏れずやがて衰えていくとの見方はある。しかし、2005年以来、首相の座に君臨するメルケルにとっては、長期政権に飽きつつある民心こそが最大の難敵となっている。2009年、2013年の過去2回にわたる「防衛戦」のようにSPD候補が失速するというシナリオは楽観的すぎるかもしれない。
 それに、2015年夏にメルケルが決断した多数の難民の受け入れは、大きな政治的後遺症をもたらしている。その年の大みそかにケルンで起きた難民絡みとされる大量痴漢事件やその後のテロ事件によって、危機管理に強いとされたメルケルの神通力の衰えは覆いきれなくなった。

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執筆者プロフィール
佐藤伸行 追手門学院大学経済学部教授。1960年山形県生れ。85年早稲田大学卒業後、時事通信社入社。90年代はハンブルク支局、ベルリン支局でドイツ統一プロセスとその後のドイツ情勢をカバー。98年から2003年までウィーン支局で旧ユーゴスラビア民族紛争など東欧問題を取材した。06年から09年までワシントン支局勤務を経て編集委員を務め退職。15年より現職。著書に『世界最強の女帝 メルケルの謎』(文春新書)。
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