軍事のコモンセンス
軍事のコモンセンス(3)

「自衛」と「安全保障」(上)

冨澤暉
執筆者:冨澤暉 2016年10月8日
エリア: 北米 日本

「日米戦争は日本の自衛戦争だったのか?」――インターネット等で調べると、この質問に「そのとおり、自衛戦争だった」と答えている日本人が多数いる。他方、「自衛戦争などと言える筈もない」という異見もかなりある。その賛否両論ともに、その論拠を1951年の米上院軍事外交合同委員会におけるマッカーサー証言においているものが多い。
 即ち、朝鮮戦争における国連軍司令官兼米軍総司令官を務めたマッカーサー元帥が対中国戦指導についてトルーマン大統領と対立、解任された後に米上院において述べた言葉の解釈が、この2つの意見の分かれ目になっているのだ。
 問題のその部分を読んでみよう。

混乱を生んだマッカーサー証言

ヒッケンルーパー上院議員:5番目の質問です。赤色中国に関する海と空からの封鎖という貴官の提案は、太平洋において米国が日本に勝利を収めた際の戦略と同じではありませんか。
マッカーサー将軍:そうです。太平洋では、米国は日本を迂回しました。そして閉じこめたのです。
日本が抱える8000万人に近い膨大な人口は、4つの島に詰め込まれていたということをご理解いただく必要があります。そのおよそ半分は農業人口であり、残りの半分は工業に従事していました。潜在的に、日本における予備労働力は、量的にも質的にも、私が知る限りどこにも劣らぬ優れたものです。
 いつの頃からか、彼らは、労働の尊厳と称すべきものを発見しました。つまり、人間は、何もしないでいるときよりも、働いて何かを作っているときの方が幸せだということを発見したのです。
 このように膨大な労働力が存在するということは、彼らには、何か働くための対象が必要なことを意味しました。彼らは、工場を建設し、労働力を抱えていましたが、基本資材を保有していませんでした。日本には、蚕を除いては、国産の資源は殆ど何もありません。
 彼らには、綿がなく、羊毛がなく、石油製品がなく、錫がなく、ゴムがなく、その他にも多くの資源が欠乏しています。それらすべてのものは、アジア海域に存在していたのです。
 これらの供給が絶たれた場合には、日本では、1000万人から1200万人の失業者が生まれると懼れていました。
 彼らが戦争を始めた目的は、ですから、主として安全保障上から導かれたものなのです。
(Their purpose, therefore, in going to war was largely dictated by security)

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執筆者プロフィール
冨澤暉
冨澤暉 元陸将、東洋学園大学理事・名誉教授、財団法人偕行社理事長、日本防衛学会顧問。1938年生まれ。防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊に入隊。米陸軍機甲学校に留学。第1師団長、陸上幕僚副長、北部方面総監を経て、陸上幕僚長を最後に1995年退官。著書に『逆説の軍事論』(バジリコ)、『シンポジウム イラク戦争』(編著、かや書房)、『矛盾だらけの日本の安全保障』(田原総一朗氏との対談、海竜社)。
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