サイバーウォー・クレムリン (10)

「カスペルスキー」と「KGB」の闇(承前)

自社ソフトのPRで2011年、来日したことも(CMキャラクターのAKB48・峯岸みなみと)(C)時事

 

 引き続きエフゲニー・カスペルスキーの足跡をたどってみることにしたい。

 1987年にKGB(国家保安委員会)大学校第4学部を卒業したカスペルスキー青年は、ソ連国防省に入省した。ただ、ここでのキャリアにもはっきりしない部分が多い。

 国防省の研究機関で研究職に就いたことはたしかなようだが、カスペルスキーは、それ以外の詳細は機密に触れるとして明かしていないためである。カスペルスキーの「公式伝記」と言える『カスペルスキーの信念:インターネットのボディガード』(ESKMO、2011年。邦訳なし)では、「物体が軌道上から地上に落ちていくコースの計算」が最初の任務だったとしているが、これが本当なのかどうかも分からない(弾道ミサイルの軌道計算であればさほど秘密めかすこともないだろう)。

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執筆者プロフィール
小泉悠(こいずみゆう) 東京大学先端科学技術研究センター准教授 1982年千葉県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修了。民間企業勤務を経て、外務省専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所客員研究員として2009年~2011年ロシアに滞在。公益財団法人「未来工学研究所」で客員研究員を務めたのち、2019年3月から現職。専門はロシアの軍事・安全保障。主著に『軍事大国ロシア 新たな世界戦略と行動原理』(作品社)、『プーチンの国家戦略 岐路に立つ「強国」ロシア』(東京堂出版)、『「帝国」ロシアの地政学 「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(同)。ロシア専門家としてメディア出演多数。
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