クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?
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新・クリミア戦争か

徳岡孝夫
執筆者:徳岡孝夫 2014年3月10日
エリア: ヨーロッパ ロシア

 世界人類の歴史は、戦争に満ちているが、不思議なことに戦争にもいろいろあって、なぜか日本人の記憶に残る戦争と、さほど残らない戦争がある

 いろんな理由があるだろうが、要するに記憶に残る人と残らない人がいるのに似ている。

 

 たとえば1962年の中印戦争である。シッキム地方の国境線をめぐって起きた人口世界第1位と第2位の大国が衝突した戦争だが、騒がれること少なかった。

 中国は平和国家だと信じている人々は、それを「中印紛争」と呼んでいる。彼らは逆に満州事変、シナ事変を「日中戦争」と呼ぶ。

 私は1967年秋に、インドで中印戦争当時のインド軍参謀総長に会って日本に帰る途中の三島由紀夫氏から会話の様子を聞いた。

「先頭の突撃部隊を撃ち倒すと、第2線が落ちている銃を拾って突撃して来る。それを倒すと第3線が来る。中国と戦うときは常識外れの戦術が要る云々」と語ったという。

 その後、自衛隊が無限の兵員を擁する仮想敵国の侵略に備え演習したという話を聞かない。とにかく戦場がヒマラヤの高地のこともあり、中印戦争は淡い印象しか残さなかったのであろう。

 

 中印とは反対に、これを書いている時点で明日にも勃発しそうなクリミア戦争は、直ちに160年も昔のクリミア戦争を思い出させる。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫
徳岡孝夫 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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