国際論壇レビュー

トルコ「強権政治」終焉とギリシャ発「欧州不安」で深まる混迷

 のちに世界がこの6月を振り返ったとき、トルコの総選挙は大きな意味を持つことになるかもしれない。

 ギリシャ金融支援交渉の混迷もあった(帰結はまだ見えない)。米議会でオバマ大統領に貿易交渉の大幅な権限を与えるTPA(貿易促進権限)法案が可決され、米国のアジア重視策で経済面のカギを握る環太平洋連携協定(TPP)交渉妥結への大きなハードルを乗り越えた。これらも大きなニュースである。

 しかし、有能な指導者として登場しながら、13年にわたる政権維持を経て「独裁者」としての地位固めを始めたエルドアン大統領に対し、トルコ国民が84%の高い投票率できっぱりとノーを突き付けたことこそ、世界史的意義がある。そう説くのは、米紙『ワシントン・ポスト』のコラムニスト、デビッド・イグナティウスである。【Turkey’s resilient democracy, The Washington Post, June 10

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執筆者プロフィール
会田弘継(あいだひろつぐ) 関西大学客員教授、ジャーナリスト。1951年生まれ。東京外語大英米語科卒。共同通信ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを務め、現在は共同通信客員論税委員、関西大学客員教授。近著に『世界の知性が語る「特別な日本』』 (新潮新書)『破綻するアメリカ』(岩波現代全書)、『トランプ現象とアメリカ保守思想』(左右社)、『増補改訂版 追跡・アメリカの思想家たち』(中公文庫)など。訳書にフランシス・フクヤマ著『政治の衰退』(講談社)など。
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