連載小説 Δ(デルタ)(1)

執筆者:杉山隆男 2017年4月22日
エリア: アジア
沖縄県・尖閣諸島の魚釣島と北小島、南小島 (c)時事

 

アメリカが日本の「センカク」を見捨てた!

何者かが巡視船「うおつり」への攻撃を開始する。

憲法9条の下にあるこの国はどう対処するべきか?

近未来の危機を描く迫真のシミュレーションノベル!

 

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 首相は一瞬、耳を疑った。

「アメリカが日本を見捨てる?」

「そうです。正確に言えば、日本のセンカクをアメリカは見捨てたのです」

 深夜に叩き起こされたことも、理不尽としか言いようのない話の中身も、神経を逆なでするに十分だったが、何より国家の大事をまるで他人事のように話す、駐米大使のいかにも外交官らしい取り澄ました語り口に、首相はいらだちを爆発させた。

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執筆者プロフィール
杉山隆男(すぎやまたかお) 1952年、東京生れ。一橋大学社会学部卒業後、読売新聞記者を経て執筆活動に入る。1986年に新聞社の舞台裏を克明に描いた『メディアの興亡』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。1996年『兵士に聞け』で新潮学芸賞受賞、以後『兵士を見よ』『兵士を追え』とつづく「兵士シリーズ」は7作目の『兵士に聞け 最終章』で完結した。ノンフイクション、小説、エッセイなど精力的に執筆し、『汐留川』『昭和の特別な一日』『私と、妻と、妻の犬』など著書多数。
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