連載小説 Δ(デルタ)(49)

執筆者:杉山隆男 2018年3月24日
エリア: アジア
沖縄県・尖閣諸島の魚釣島と北小島、南小島 (C)時事

 

【前回までのあらすじ】

市川の奮闘と海上保安庁SSTの突入で、巡視船「うおつり」での戦いは勝利に終わった。今度は秘密部隊デルタの、センカクでの戦いが始まろうとしていた。

 

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 闇の底に沈む島に、突然、照明弾が立てつづけに6発、マグネシウムの強烈な光を放って、あたりを真昼の明るさに一変させた。

 劇的と言うなら、これ以上度肝を抜く演出はなかったし、視覚効果は世界のクロサワでも息をのんだに違いないほど圧倒的だった。奇襲のはずなのに、わざわざ襲撃を告げる照明弾を、これでもかと嵩にかかったように間髪いれず撃ちこんだのは、敵の殲滅より、彼らを一刻も早く島から退去させることにセンカク上陸作戦の最大の目的があったからだ。

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執筆者プロフィール
杉山隆男(すぎやまたかお) 1952年、東京生れ。一橋大学社会学部卒業後、読売新聞記者を経て執筆活動に入る。1986年に新聞社の舞台裏を克明に描いた『メディアの興亡』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。1996年『兵士に聞け』で新潮学芸賞受賞、以後『兵士を見よ』『兵士を追え』とつづく「兵士シリーズ」は7作目の『兵士に聞け 最終章』で完結した。ノンフイクション、小説、エッセイなど精力的に執筆し、『汐留川』『昭和の特別な一日』『私と、妻と、妻の犬』など著書多数。
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