ネスレの決断:アフリカビジネスは「中間層幻想」から脱却せよ

執筆者:平野克己 2015年6月23日
タグ: 日本

「ネスレ」(本社スイス)がアフリカ事業の縮小を決めた。今年中にアフリカ21カ国での雇用を15%削減する。すでにウガンダとルワンダの事務所を閉鎖し、アフリカでの生産を半減するという。同社はいわずと知れた世界最大の食品飲料企業で、1916年に南アフリカへ進出したのを皮切りに、現在は赤道アフリカ地域21カ国に拠点をもつ。2008年からアフリカ事業の拡大に乗り出し、10億ドルを投資してきた。その、アフリカビジネスのベテランが、ここにきて方針を転換したのである。

 同社赤道アフリカ地域のクルメナッハCEO(最高経営責任者)は、「私たちはここを次のアジアだと考えてきた。だがアフリカの中間層は予想外に薄く、さして増えてもいないことがわかった」と語っている。したがってネスレは、新たに積み増すつもりだった中間層向け製品を撤収し、従来の貧困層向け製品のラインアップに戻すことを決めたのだ。

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執筆者プロフィール
平野克己(ひらのかつみ) 1956年生れ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院経済研究科修了。スーダンで地域研究を開始し、外務省専門調査員(在ジンバブエ大使館)、笹川平和財団プログラムオフィサーを経てアジア経済研究所に入所。在ヨハネスブルク海外調査員(ウィットウォータースランド大学客員研究員)、JETRO(日本貿易振興機構)ヨハネスブルクセンター所長、地域研究センター長などを経て、2015年から理事。『経済大陸アフリカ:資源、食糧問題から開発政策まで』 (中公新書)のほか、『アフリカ問題――開発と援助の世界史』(日本評論社)、『南アフリカの衝撃』(日本経済新聞出版社)など著書多数。2011年、同志社大学より博士号(グローバル社会研究)。
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