クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?
クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

学者とデモ隊の正義

徳岡孝夫

 いきなり貧乏臭い話で恐縮だが、新聞記者を32年、自営の記者になって31年、私は「赤坂の店」に知り合いが1軒もない。銀座についても同様である。
 呑まないわけではないが、呑むときは自分の器量の内で呑む。だから政治部記者に連れて行かれたこの晩のことは、鮮明に憶えている。

 折から私は、ある小さい政治的スキャンダルを追っていた。細部は蒸し返すに及ばない。とにかく当時の衆議院議長が地元の高利貸しからヤミ献金を取っていた。週刊誌記者だった私は、それを取材し、政治部へ行って自民党担当の某君(故人)が仕事先から帰社するのを待ち、青臭い議論を吹っかけた。
 黙って聴いていた彼は「徳さん、ちょっと出まひょ。まだ時間おまっしゃろ」と大阪弁で誘った。われわれは地下の車両部へ降り、そこから車で「赤坂の店」へ行った。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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