エマニュエル・マクロン存分に(かつ、やや曖昧に)語る

Foresight World Watcher's 4Tips

日本とは自衛隊とフランス軍の「円滑化協定(RAA)」を交渉入りすることでも合意した[エリゼ宮で岸田首相を出迎えるマクロン大統領(右)=2024年5月2日、フランス・パリ](C)EPA=時事

 カレンダー通りにお休みの方ならゴールデンウィークも今日で終わり。少し憂鬱ではありますが、明日からのスタートに役立つ国際情勢の論考をお届けします。

 習近平中国国家主席が5日から5年ぶりの訪欧中です。フランスには国賓として6~7日に滞在し、6日にはエマニュエル・マクロン仏大統領との共同声明が発表されます。このほかウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長が加わる中仏EU(欧州連合)首脳会談も予定され、さらにセルビア、ハンガリーと10日までの旅程が組まれています。

 中国とフランスは今年で国交樹立60周年、中国の報道は両国関係の深さを「いくつもの『1番目』」と打ち出しています。宮本雄二・元駐中国大使によれば、習近平主席がこの1年に直接関与した活動のほぼ半分は外交とのこと(この点についての宮本氏の論考は明日7日に公開します)。その成果を強くアピールする背景には内政の求心力不足があるようですが、一方のマクロン大統領も先日の岸田文雄首相との首脳会談ほか、外交活動を展開中です。

 これを支持率回復と6月に控えた欧州議会選挙に向けた演出と見る向きもありますが、フランスがある種の不規則発言をする際にはアメリカやNATO(北大西洋条約機構)の手詰まりを補完してみせるようなところもあり、単純なパフォーマンスで済まされるものでもないでしょう。英「エコノミスト」誌が行ったマクロン大統領へのインタビューはかなりの長尺記事ですが、一読の価値は確実にあります。

 今週は公開日が変則になりましたが、フォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事4本、皆様もよろしければご一緒に。

Can Xi Win Back Europe?【Christina Lu/Foreign Policy/5月3日付】

「最後の欧州歴訪から5年、習近平国家主席は日曜日[5月5日]に新たな使命を帯びて欧州に戻る」

 こう始まるのは米「フォーリン・ポリシー(FP)」誌の記者、クリスティーナ・リューによる「習は欧州を取り戻せるか?」(5月3日付)だ。

「習が前回、欧州大陸に足を踏み入れたとき、欧州の北京に対する見方、そしてより広範な地政学的状況は現在とは劇的に異なっていた」とリューが指摘するとおり、2019年の訪欧の時点では、COVID-19のパンデミックやロシアのウクライナ侵攻、中国製の安価なEV(電気自動車)の欧州席巻はまだ起きておらず、イタリアはG7諸国として初めて一帯一路構想に参加していた。

 だが、こうした状態は今や、すべてが覆っており、「中国に対する欧州の姿勢は激しく悪化した」。

「中国首脳[習]の訪問は、欧州当局がスパイ活動容疑を取り締まり、欧州連合(EU)が北京の貿易慣行をめぐって新たな関税の発動を警告するなど、緊張がエスカレートしてきた数週間の直後となる。直近2週間でドイツと英国の当局は中国がらみのスパイ容疑で6人を起訴した。ブリュッセルはまた、電気自動車、風力タービン、ソーラーパネルに対する中国の高額な補助金や北京の医療機器調達に関する調査など、中国に対してますます対決的な貿易姿勢をとっている」
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カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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