「パリ連続テロ」で浮かび上がった「価値観」の対立

渡邊啓貴
執筆者:渡邊啓貴 2015年1月14日
カテゴリ: 国際 文化・歴史 社会

 1月7日、フランスの政治風刺週刊新聞『シャルリー・エブド』のパリ本社を襲い、12人を殺害して逃走したクアシ兄弟は、パリ北東ダマルタンアンゴエルの印刷所に人質をとって立てこもったが、9日夕方、仏特殊部隊の攻撃で射殺された。『シャルリー・エブド』紙は過去にも預言者ムハンマドの風刺絵を掲載し、イスラム原理主義者からターゲットとされていた。

 

フランスの9.11

 一方で、パリ市内のポルト・ド・ヴァンセンヌのスーパーマーケットで人質をとって立てこもっていたアメディ・クリバリ容疑者も同時間に特殊部隊によって射殺されたが、人質のうち4人が死亡した。

 他方、11日午後、オランド大統領の呼びかけで、各国の国家元首など約50カ国の首脳がパリに集まり、テロに抗議する決意を示すデモ行進を行った。連続テロ事件は17人の犠牲者を伴って一応終結したが、この銃撃テロがフランスを大きく傷つけ、動揺させたことは否めない。

 オランド大統領は、事件当夜の演説で、この事件を断固としてテロとして扱い、国内のイスラムを中心とする社会統合問題と切り離そうとした。フランス国内のイスラム教徒・移民をめぐる社会問題の妙薬はない。政権としては当面一連のテロ殺害事件を「言論の自由」を踏みにじる、民主主義国家フランスの根幹を揺るがすものとして断罪した。これに世界は同調した。フランス革命の人権宣言以来、「自由」を近代的価値の第1として主唱してきたフランスの面目躍如である。それは全く正しい。『ルモンド』紙はこの事件を「フランスの9.11」と名づけた。

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執筆者プロフィール
渡邊啓貴
渡邊啓貴 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。1954年生れ。パリ第一大学大学院博士課程修了、パリ高等研究大学院・リヨン高等師範大学校客員教授、シグール研究センター(ジョージ・ワシントン大学)客員研究員、在仏日本大使館広報文化担当公使(2008-10)を経て現在に至る。著書に『ミッテラン時代のフランス』(芦書房)、『フランス現代史』(中公新書)、『ポスト帝国』(駿河台出版社)、『米欧同盟の協調と対立』『ヨーロッパ国際関係史』(ともに有斐閣)『シャルル・ドゴ-ル』(慶應義塾大学出版会)『フランス文化外交戦略に学ぶ』(大修館書店)『現代フランス 「栄光の時代」の終焉 欧州への活路』(岩波書店)など。
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