外国人労働者の現実と未来 中国人「研修生」が作った東京ミッドタウン

出井康博
執筆者:出井康博 2007年8月号
エリア: 中国・台湾 日本

 日本の北の端、宗谷岬からオホーツク海沿いを車で南下すること約四十分。携帯電話の電波も途切れがちな辺境に「ホタテの村」がある。 三千人に満たない人口ながら、ホタテの水揚げ量で日本一を誇る北海道猿払村。その村を支えているのが、中国からやって来た約百人の若い女性たちだ。 海産物の生臭さと潮の匂いが立ち込める作業場に、手の平大のホタテの貝殻がぶつかり合う音が大きく響く。そんなホタテの加工場で、中国・山東省出身の劉暁玲さん(二三)は働いている。「猿払村に着いたときは、ちょっと田舎でびっくりしました。でも、今は大好きです」 化粧っ気のない顔で笑う彼女は、日本に来て三年目。独学で日本語検定二級を取得し、流暢な日本語を話す。 劉さんは、外国人研修・技能実習制度(以下、研修制度)を使って来日した。一年目は研修生、二年目以降は実習生という資格で働く。日本に滞在できる期間は三年。劉さんも今冬には帰国する。それまでに日本語検定一級を取り、中国で日本語教師になるのが夢だという。 一九九三年に制度ができて以降、外国人研修・実習生(以下、研修生)は増え続けている。現在、この資格で日本に滞在する外国人は約十六万人。留学生の約十三万人を凌ぐ。制度上は「労働者」ではないが、ほとんどが製造業や農業、水産業で肉体労働に従事し、国籍別では中国が七割以上を占めるのが特徴だ。

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執筆者プロフィール
出井康博
出井康博 1965年岡山県生れ。早稲田大学政治経済学部卒。英字紙『THE NIKKEI WEEKLY』記者を経てフリージャーナリストに。月刊誌、週刊誌などで旺盛な執筆活動を行なう。主著に、政界の一大勢力となったグループの本質に迫った『松下政経塾とは何か』(新潮新書)、『年金夫婦の海外移住』(小学館)、『黒人に最も愛され、FBIに最も恐れられた日本人』(講談社+α文庫)、本誌連載に大幅加筆した『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社)、『民主党代議士の作られ方』(新潮新書)がある。最新刊は『襤褸(らんる)の旗 松下政経塾の研究』(飛鳥新社)。
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