行き先のない旅
行き先のない旅(81)

ヨーロッパで定着する「ヨーロッパ以外」の健康法

大野ゆり子
執筆者:大野ゆり子 2010年2月号
カテゴリ: 国際
エリア: ヨーロッパ

 肩こりは日本人に独特な症状で、「肩こり」に当たる外国語はない、という話を日本の本でたびたび読んだことがある。今まで新しい国に住むたびに聞いてみたが、そんなことはない。何人かの肩も触ってみたが、場合によってはごく普通の日本人より肩が凝っていた。肩を揉んであげると、皆、気持ちがいいと喜ぶ。肩がひどく凝っているのに、気がついていないらしい。 ただ、確かに肩こりという名詞はない。「肩が硬直している」とか「固い」という形容詞を使うのがほとんどで、肩が凝っていてもそれを揉みほぐす習慣がなく、日本の薬局で所狭しと並んでいる湿布薬や塗り薬もない。 その傾向が変わってきたのは、ここ十年ぐらいだろうか。ヨーロッパでもマッサージを施術する場所が増えてきた。ちょうど、和食ブームでSUSHIを食べる人が増えてきたのと時を同じくするかもしれない。 今や寿司バーはヨーロッパのどの街角でも見かけられ、スーパーマーケットでもパックが売られるようになった。ファーストフード感覚なのに、カロリーが少ないのが人気の秘密だ。十年前までは海外の和食レストランというと日本人客がほとんどだったが、今や地元の客がメイン。しかも大変な行列である。そのころから、ストレスを溜めないで物事を流す態度が「ZEN(禅)」と呼ばれはじめ、流行語として定着した。電車が遅れてイライラしても、「禅」の態度で心を平らかにしようなどという調子で使われるのだ。こういう表現を聞くと外国人と寿司バーでアボカド巻きを食べ、「日本食っておいしいわね」と言われた時のように、少し違うような気がしながら、まぁ、これも日本発の文化が国際化していく一つのプロセスなのだろう。

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執筆者プロフィール
大野ゆり子
大野ゆり子 エッセイスト。上智大学卒業。独カールスルーエ大学で修士号取得(美術史、ドイツ現代史)。読売新聞記者、新潮社編集者として「フォーサイト」創刊に立ち会ったのち、指揮者大野和士氏と結婚。クロアチア、イタリア、ドイツ、ベルギー、フランスの各国で生活し、現在、ブリュッセルとバルセロナに拠点を置く。
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