「緊急経済対策」(9月10日) 政策の一貫性はどこに?

原英史
執筆者:原英史 2010年9月13日
カテゴリ: 政治
エリア: 日本

 9月10日、「新成長戦略実現に向けた3段構えの緊急対策」(以下「緊急対策」)が閣議決定された。http://www.kantei.go.jp/jp/keizaitaisaku2010/keizaitaisaku.pdf 

指摘したい問題はいろいろとあるのだが、とりあえず3点指摘しておきたい。
 
(1)「雇用を機軸とした経済成長」の具体策はどこに?
 
 「雇用を起点」という主張は、菅総理が代表選公約として打ち出したものだが、今回の「緊急対策」で、政府の公式方針としてこれが閣議決定された。「『雇用』を機軸とした経済成長を目指す。雇用が広がれば、所得が増え、消費を刺激し、経済が活性化する」と明記されている。
 
 もっとも、その直後に「①経済を成長させて『雇用を創る』」とあって、結局どちらが起点と言っているのかよく分からない面もあるが、それはともかく、具体策が決め手を欠いている。これで雇用が増えるとはなかなか想定しがたい内容だ。
 
 例えば、「卒業後3年以内は新卒扱いとする」などの新卒雇用対策が中核になっているが、これで雇用は増えるのだろうか。むしろ、3回チャンスができると思って、就職先を“選り好み”し、就職浪人する人が増えてしまわないか。実際に、就職難と言いながら、中小企業に就職希望する新卒学生の数は少ないという。このため「緊急対策」でも、「採用意欲の高い中小企業へのマッチング促進」という項目を掲げている。その一方で“選り好み”を促進してしまったら、政策同士が足を引っ張らないのか。・・・具体策が練れていない印象だ。
 
(2)「第三の道」(需要面からの成長)はどこに?
 
 菅内閣はかつて盛んに「第三の道」と言っていた。今回の「緊急対策」の根っこである6月18日閣議決定「新成長戦略」では、「第三の道」、「需要面からの成長」重視を前面に打ち出していた。
 
 ところが、今回の「緊急対策」を見ると、需要面の「消費」拡大策として掲げられたのは、①家電エコポイントの延長、②住宅エコポイントの延長、③住宅ローンの大幅引き下げの延長。旧来の政策の延長だけで、率直に言ってかなり手抜きだ。
 
 「かつての方針はそれとして、今回は雇用重視」というのかもしれないが、それでは、場当たり的に政策を打ち出しているだけと言われても仕方がない。
 
(3)会議乱立より司令塔が必要なのでは?
 
 こうして見るに、気になるのは「一貫性」のなさだ。(1)→「緊急対策」そのものの中の一貫性、(2)→かつての方針との一貫性。やはり、国家戦略の司令塔が必要だと思う。
 
 このところ、かつての経済財政諮問会議に類似した会議(つまり、総理をトップに、関係閣僚と民間有識者がメンバー)が次々に作られている。「新成長戦略実現会議」、「雇用戦略対話」が発足しているほか、「国内投資促進円卓会議」なるものもできるそうだ。
 
 だが、同じような会議をいくつも作っても、会議運営に追われるばかりで、内容がおろそかになりはしないか。大体、新しい会議の発足そのものがニュースになるのは、政策や議論の内容がないときなのだ。
 
 まずは、根幹となる「国家戦略局」なり「国家戦略会議」なりをきちんと作って、そこから、成長戦略、雇用戦略、投資戦略を打ち出していけばいいと思うのだが・・。
 
(原 英史)
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執筆者プロフィール
原英史
原英史 1966年東京都生れ。東京大学法学部卒、米シカゴ大学院修了。89年通商産業省(現・経済産業省)入省。大臣官房企画官、中小企業庁制度審議室長などを経て、2007年から安倍・福田内閣で行政改革・規制改革担当大臣の補佐官を務める。09年7月退職。株式会社政策工房を設立し、政策コンサルティング業を営む。大阪府・市特別顧問、国家戦略特区ワーキンググループ委員(内閣府)、社会保障審議会年金事業管理部会委員(厚生労働省)を務めるほか、NPO法人万年野党理事、「地方議会を変える国民会議」発起人など。著書に『官僚のレトリック』(2010年、新潮社)、『「規制」を変えれば電気も足りる』(2011年、小学館101新書)、『日本人を縛りつける役人の掟/岩盤規制を打ち破れ』(2014年、小学館)、『国家と官僚』(2015年、祥伝社新書)。
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