イラク戦闘任務終結宣言とグラウンドゼロ付近のモスク建設―オバマの政治的な勘どころがずれてきている

執筆者:渡部恒雄 2010年9月14日
カテゴリ: 国際
エリア: 北米 中東

 オバマ大統領は8月31日、イラクでの戦闘任務の終結を正式に宣言し、執務室から全米むけに演説した。大統領は、軍人が海外で発揮したのと同等な「エネルギー、勇気、共通の目的という意識」を、今度は米国民が集結して国内の課題に対処するようにと発言し、戦闘終結は、「米国がリーダーシップを維持・強化する意向を示す、世界へのメッセージ」の役割を果たすはずだと発言した。そして「現在、最も差し迫った任務は、経済を再建し、失業した数百万の国民が再び働けるようにすることだ」と国内経済の建て直しを強調した。

 このような動きは、当然のことながら、苦戦が予想される11月の中間選挙を睨んだ政治的な動きでもある。一方、イラクの実態をみれば、戦闘任務の終結を宣言するほどの治安の改善やイラク政府の機能が回復したとはいえず、むしろ、大きな不安を抱えたままの宣言となる。米国内の反応をみても、イラクの重荷から開放されたというような安堵感のような報道はほとんどなく、むしろ、前任のブッシュ大統領が、2003年3月にイラクで戦闘を開始し、5月に早々と戦闘終結宣言をしながら、むしろその後、本格的に厳しい戦闘任務が待ち受けていたような過去のケースを彷彿させる評価が多く見受けられる。

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執筆者プロフィール
渡部恒雄 わたなべ・つねお 東京財団上席研究員。1963年生れ。東北大学歯学部卒業後、歯科医師を経て米ニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチで政治学修士号を取得。1996年より米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員、2003年3月より同上級研究員として、日本の政党政治、外交政策、日米関係などの研究に携わる。05年に帰国し、三井物産戦略研究所を経て現職。著書に『「今のアメリカ」がわかる本』など。
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