台湾vs.フィリピン:外交制裁の手段となる出稼ぎ労働者

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2013年5月16日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障

 台湾漁船に対するフィリピン沿岸警備隊の銃撃で台湾漁民の船員1人が死亡した問題で、昨日、台湾の総統府はフィリピンに対する8項目の制裁措置を発動させると発表した。基本的には偶発的な問題のようなので、数カ月内に双方が感情を落ち着かせたところで手打ちが行なわれ、鎮静化していくのではないかと個人的には見ているが、それとは別に興味深かったのが、大使召還など台湾の制裁措置のメニューの中で、フィリピン人労働者の台湾での就労に新規ビザを出すことを凍結する内容が含まれていたことだ。

 外交上の問題で出稼ぎ労働者が制裁措置の1項目に入ること自体が新鮮だ。それだけフィリピンにとっても台湾にとっても現実的なインパクトがある問題ということである。

 日本と同じで極端な少子化と高齢化が進行する台湾は、日本と違って外国人労働者に早くから門戸を開いてきた。特に、病院や介護において外国人を広く活用しており、大きな病院に行くと、ロビーでは台湾人の車いすを押しているフィリピン人やインドネシア人がたくさんいて、ちょっとびっくりさせられる。

 台湾は、フィリピン、インドネシア、タイ、マレーシア、ベトナムと協定を結んで労働者を受け入れている。台湾の外国人労働者は約50万人。フィリピン人はインドネシア人と並ぶ最大勢力で、うち27%を占めている。フィリピンにとって、労働者は最大の輸出産業だと言われる。シンガポールでも香港でも、日曜日のキリスト教会周辺にたむろしているフィリピン人を見かけることは日常茶飯事だ。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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