「王制論議」が示すタイ社会の地殻変動

樋泉克夫
執筆者:樋泉克夫 2010年1月号
カテゴリ: 国際 文化・歴史

 十二月五日、タイのプミポン国王は八十二歳の誕生日を迎えた。高熱と食欲不振で九月から入院が続いていたが、この日は一時病室を離れ沿道の市民の歓呼のなかを王宮に戻り、祝賀に参上したアピシット首相以下政府高官を前に、「国家国民の永遠の繁栄こそが、我が幸せとするところ。皆が確固たる自覚と知識を持って公益を優先し、己の責務を誠実に全うすることによってのみ、我々に糧を恵む祖国に永続的な発展と繁栄とがもたらされることを心得よ」と語りかけた。
 前年に続き今回も無期限延期となったが、例年は誕生日前夜に参内して祝賀を述べる首相以下の「文武百官」を前に、国王は国の指導者としての在り方、国の行く末などにつき、時に数十分にわたって自らの考えを語りかけてきた。国を挙げて祝う国王誕生日を選び、首相以下に諄々と教え諭す姿は、国王こそがタイ国民にとって厳父であり慈父であることを内外に強く印象づけてきたようだ。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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