社会保障改革に立ちはだかる「既得権益層」

執筆者:鈴木亘 2010年4月号
カテゴリ: 経済政策・社会保障
エリア: 日本

日本の社会保障は過去の成功体験が全く通用しない前人未踏の領域に入る。だが全世代が危機感を共有しなければ――。 二〇三〇年の社会保障の将来像を考えるに当たって、もっとも重要なその規定要因は、今後わが国が迎える人口構成の変化である。二〇三〇年までの二十年間、世界最速の人口減少、少子高齢化が進み、前人未踏の領域に入る。これまでの成功体験など全く通用しない、まさに常識が逆転する「アリス・イン・ワンダーランド」である。その不思議の世界に、国民の意識が適応できるか、いつの時点で気づいて制度を本気で変えようとするかが、わが国の未来を左右するターニング・ポイントだ。 しかし、これまでの成功体験があまりに目覚しかったが故に、その適応はきわめて困難であり、「懲りねば悟らない」と思われる。その意味で、もっとも起こり得る将来像は、行き着くところまで行くという「奈落の二十年」なのかもしれない。 まず、わが国が今後体験する人口変化の凄まじさを直視しておこう。 グラフ1はわが国の労働力人口の推移を描いたものである。労働力人口とは、十五歳から六十四歳の人口層で、わが国の経済成長に貢献し、社会保障の支え手になる人々のことである。これをみると分かるように、労働力人口は一九九五年ごろをピークに減少しており、今後、まさに坂道を転げるようにして減少が加速する。二〇三〇年の労働力人口は約六千七百万人とピークから約二千万人も減少し、一九六五年の水準になる。わが国の高度成長を支えてきた主因が、労働力人口の著しい増加率にあったことは疑うべくもないが、その全く逆の現象が今後現出するのである。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
鈴木亘 1970年生れ。上智大学経済学部卒。日本銀行勤務。大阪大学大学院修了(経済学博士)。大阪大学社会経済研究所、日本経済研究センター、東京学芸大学を経て、2009年4月より現職。規制改革会議専門委員(保育担当)。主著に『生活保護の経済分析』(共著、東京大学出版会、第51回日経・経済図書文化賞)、『だまされないための年金・医療・介護入門』(東洋経済新報社、第9回日経BP・BizTech図書賞)がある。
comment:0
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順