「イラン核合意」の行方(上)精緻に設計された「枷」

執筆者:鈴木一人 2015年9月2日
エリア: 北米 中東

 2002年に地下に建設された秘密のウラン濃縮施設が発覚し、2003年からEU3(英仏独)によって始められたイランとの核交渉は、2013年のロウハニ大統領の就任をきっかけに急速に交渉が進展し、12年の月日を経てようやく今年7月14日に包括的合意がまとまった。筆者は核合意成立の直前(7月9日)まで国連安保理決議1929号に基づいて設置された専門家パネルの一員として、国連によるイラン制裁に関連する情報収集と分析の仕事に従事していたこともあり、イランの核開発関連活動と核交渉の経緯を業務として観察してきた。
 今回のイラン核合意は159ページにも及ぶ長大な文書であり、加えて国連安保理決議2231号でイランの核開発のみならず、これまで制裁の対象となってきたミサイル開発と武器禁輸についても言及されているため、大変複雑でわかりにくい合意となっている。本稿ではこの合意について、わかりやすくおさらいしてみたい。

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執筆者プロフィール
鈴木一人(すずきかずと) すずき・かずと 東京大学公共政策大学院教授 国際文化会館「地経学研究所(IOG)」所長。1970年生まれ。1995年立命館大学修士課程修了、2000年英国サセックス大学院博士課程修了。筑波大学助教授、北海道大学公共政策大学院教授を経て、2020年より現職。2013年12月から2015年7月まで国連安保理イラン制裁専門家パネルメンバーとして勤務。著書にPolicy Logics and Institutions of European Space Collaboration (Ashgate)、『宇宙開発と国際政治』(岩波書店、2012年サントリー学芸賞)、編・共著に『米中の経済安全保障戦略』『バイデンのアメリカ』『ウクライナ戦争と世界のゆくえ』『ウクライナ戦争と米中対立』など多数。
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