サイバーウォー・クレムリン (17)

宇宙での「劣勢挽回」を狙うロシア「衛星攻撃」能力

執筆者:小泉悠 2018年6月15日
エリア: ヨーロッパ
戦場は宇宙へ(NASAのHPより)

 

 ロシア国防省の刊行物に、『軍事思想(ヴォエンナヤ・ムィスリ)』という雑誌がある。ロシア軍参謀本部が編集している月刊誌で、毎号、現役・退役の軍人たちによる様々な論文が掲載される。著者はいずれも制服組の軍人なので、「山岳地での補給に関する諸問題」といった極めて専門的な論文もあるが、安全保障を巡る大状況を把握する上で興味深いものも少なくない。

 ここ数回の小欄で取り上げてきたロシアの宇宙戦略について言うと、2018年5月号に「現代的条件下における宇宙優勢確保のためのアプローチ」と題された論文が掲載された。これによると、宇宙優勢とは「一方の軍事衛星が他方のそれに対して決定的な優位」を有する状態のことを言い、このような環境下では「人工衛星に対する敵の妨害を受けることなく課題を解決することが可能となる」という。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
小泉悠(こいずみゆう) 東京大学先端科学技術研究センター准教授 1982年千葉県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修了。民間企業勤務を経て、外務省専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所客員研究員として2009年~2011年ロシアに滞在。公益財団法人「未来工学研究所」で客員研究員を務めたのち、2019年3月から現職。専門はロシアの軍事・安全保障。主著に『軍事大国ロシア 新たな世界戦略と行動原理』(作品社)、『プーチンの国家戦略 岐路に立つ「強国」ロシア』(東京堂出版)、『「帝国」ロシアの地政学 「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(同)。ロシア専門家としてメディア出演多数。
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