中国の「台湾武力統一」最有力ケースをシミュレートする

執筆者:岩田清文 2021年4月21日
カテゴリ: 軍事・防衛 政治
エリア: アジア
台湾東部、花蓮空軍基地を飛び立つ台湾のF16戦闘機(C)AFP=時事
 
菅義偉首相とジョー・バイデン大統領による初の首脳会談の結果、日米共同声明に「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と明記された。日米首脳の合意文書に「台湾」が盛り込まれるのは、日中国交正常化前の佐藤・ニクソン声明以来、実に52年ぶりだ。その背景には、万が一「台湾有事」が生起すれば日本にとって“対岸の火事”ではないという現実がある。軍事的に最も合理的と思われるシミュレーションに基づき、元自衛隊最高幹部が“眼前に迫った危機”に警鐘を鳴らす。

戦争準備に本気の中国

 今年3月16日、日米防衛相による対面会談において、台湾海峡で不測の事態が起きかねないとの懸念を共有し、台湾有事に際しては緊密に連携する方針も確認された。報道では、台湾有事を議題としたことが明らかになるのは異例とされたが(脚注1)、「異例」という言葉が表すように、これまで台湾問題は、まさにアンタッチャブルな案件として放置されてきた面は否定できない。しかし、昨今の情勢はもはやそれを許さなくなってきている。

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執筆者プロフィール
岩田清文(いわたきよふみ) 元陸上幕僚長。1957年、徳島県生まれ。79年、陸上自衛隊に入隊(防大23期)。第7師団長、統合幕僚副長、北部方面総監などを経て、2013年、第34代陸上幕僚長に就任。16年に退官。著書に『中国、日本侵攻のリアル』( 飛鳥新社)、『自衛隊最高幹部が語る令和の国防』 (新潮新書)。
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