屋良朝苗:革新陣営の「全県民的」現実主義

執筆者:野添文彬 2022年5月15日
タグ: 日本
エリア: アジア 北米
行政主席公選に勝利した屋良(沖縄県公文書館所蔵)
初の主席公選に革新陣営から出馬した屋良朝苗は、日本政府の支援する西銘順治を制して行政主席に就任した。「全県民的立場」を重視するも、様々なイデオロギーを持つ政党・団体からなる政治基盤は盤石とは言えなかった。そこへ「最初の難関」がやってくる。

 

主席公選の実施へ

 1952年4月に米国統治下の沖縄の行政機関として琉球政府が発足して以来、そのトップである行政主席は、米軍当局によって任名されてきた。しかし沖縄では、自治権の拡大のため、行政主席の公選を求める声が高まっていく。

 佐藤栄作首相の沖縄訪問直後の65年9月には、屋良朝苗は他の沖縄の有識者とともに「主席公選推進五人有志会」の一員となり、米国民政府や日本政府に主席公選の実施を要請した。

 ついに68年2月1日、フェルディナンド・トーマス・アンガー高等弁務官は、主席公選を実施するとの声明を発表した。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
野添文彬(のぞえふみあき) 沖縄国際大学法学部 地域行政学科准教授。1984年生まれ。一橋大学経済学部卒業後、同大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(法学)。専門は国際政治学、日本外交史、沖縄基地問題。主な著書に『沖縄返還後の日米安保: 米軍基地をめぐる相克』(吉川弘文館/2016年)、『沖縄米軍基地全史』(吉川弘文館/2020年)がある。
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