エジプトの軍部、一旦退却

池内恵
執筆者:池内恵 2011年11月23日

 エジプトで、11月22日午後7時過ぎ(現地時間。日本時間では23日午前2時過ぎ)、国軍最高評議会議長のタンターウィー元帥がテレビ演説し、シャラフ暫定首相らが提出した内閣総辞職を受け入れると共に、11月28日に第一回投票が行われる選挙は予定通りに行うものとした。そして、これまで軍がタイムテーブルを曖昧にしてきた大統領選挙を、2012年7月までに行うと述べ、国軍最高評議会による統治の永続化を望んでいない旨を表明した。

http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-15834844

 これは先週末から激化し、より直接的に軍部を批判するようになっていたデモに対する妥協と言える。

 11月18日(金曜日)に、主にカイロの中心部タハリール広場で大規模デモが行われ、一部はその夜から翌日にかけて広場の占拠を図った。これに対して軍・治安機構が強圧的な弾圧を行った。これまでに少なくとも28人(BBCによれば)の死者が出ている。22日もデモは持続し、1月~2月にムバーラクに対して唱和したような「辞任要求」がタンターウィー議長に向けられるようになってきていた。

 今回のデモの直接のきっかけは、11月1日にアリー・セルミー副首相(民主化担当)が明らかにした「憲法のための基本諸原則」である。この「基本諸原則」は、国軍最高評議会の主導で作成されたことが明らかだった。11月28日から、3次にわたり3カ月をかけて行われる予定の人民議会選挙を経て立憲会議が結成され、新憲法が起草されるはずだが、事前にその憲法の内容を縛り、新憲法によって設立される新体制の選択の幅に制約を課したものとなっている。

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執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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