東シベリア 亡国のパイプライン

名越健郎
執筆者:名越健郎 2006年5月号
エリア: ロシア

官が独走し、かかるコストは膨大。ロシアに弄ばれ、中国を苛立たせるだけの石油パイプラインなど、本当に必要なのか。[モスクワ発]日中両国が競合するロシア・東シベリア油田からの太平洋石油パイプライン建設計画が近く着工する。第一段階の事業化調査は終わり、資材の入札が始まった。プーチン政権は日本と中国のどちらに石油を優先供給するか決めていないが、日本は過酷な東シベリア油田開発に協力させられた挙げ句、見返りは少ないという損な役回りを演じかねない。民間を無視した官僚主導プロジェクトの陥穽を追った。押しつけられる油田開発「ロシアが今後推進する超大型プロジェクトが世界のエネルギー需給を緩和する」――。三月十六日、モスクワでの主要八カ国(G8)エネルギー担当相会合に出席した各国代表を前に、プーチン大統領は、(1)バレンツ海のシュトックマン・ガス田開発(2)バルト海経由の北部欧州ガスパイプライン(3)太平洋石油パイプライン――の三大プロジェクトを挙げ、「世界のエネルギー安全保障を強化する戦略的計画」と自賛した。 大統領はかつて、豊富なエネルギー資源を「神の賜物」と形容した。一九九七年に書いた修士論文では、「ロシアの資源を活用すれば、世界的な大国の地位を取り戻すことができる」と主張していた。空前の石油価格高騰の中、ロシアが初のG8議長国を務める今年、大統領の夢が一歩実現に近づくかもしれない。

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執筆者プロフィール
名越健郎
名越健郎 1953年岡山県生れ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長を歴任。2011年、同社退社。現在、拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学東アジア調査研究センター特任教授。著書に『クレムリン秘密文書は語る―闇の日ソ関係史』(中公新書)、『独裁者たちへ!!―ひと口レジスタンス459』(講談社)、『ジョークで読む国際政治』(新潮新書)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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