中道化する中南米の政治地図

遅野井茂雄
執筆者:遅野井茂雄 2010年11月16日
カテゴリ: 政治 国際
エリア: 中南米

 ブラジルの大統領選挙は、先月31日の決選投票で労働党ルーラ大統領の後継のジルマ・ルセフ氏(元官房長官)が、野党社会民主党系のセラ候補の追い上げを制し、予想通り当選を果たした。初の女性大統領という話題性はあるが、左派政権の下で、財政規律と市場原理を重視しながら国家主導で成長を加速させ社会問題に積極的に対応しようとする、いわゆる「ルーラ主義」と呼ばれる政策が継承されることになる。

 来年のペルー、ニカラグア、アルゼンチンの選挙を残しているが、2009年から10年をピークにした大統領選挙のサイクルはこれでほぼ一巡した。ブラジルなどにみられるように左派政権の健在ぶりは相変わらずだが、5年前に顕著にみられた左傾化のうねりという地域規模での潮流には変化がみられ、中道への政治の復元化現象が働いている。多くの国で左派政権は継承されたが、パナマ、チリ、ホンジュラスでは中道右派に政権が移行した。ベネズエラの議会選挙での野党の躍進、エクアドルでの警官の反乱、アルゼンチン・キルチネル前大統領の突然の死亡など(いずれも本誌「中南米の部屋」の関連エントリを参照)、急進的な左派政権には逆風が吹いていることも見過ごせない。

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執筆者プロフィール
遅野井茂雄
遅野井茂雄 筑波大学大学院教授、人文社会系長。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(編著)。
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