インテリジェンス・ナウ
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パレスチナ調停 CIA関与の真相

春名幹男
執筆者:春名幹男 2002年7月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中東 北米

 パレスチナ自治区のヨルダン川西岸ラマラ近郊ベイトゥニア。ここにパレスチナ自治政府治安警察の本部が置かれている。なぜか、通称ペンタゴンと言うらしい。米国の援助で建てられたからそう呼ばれているという説もある。 今年四月初め、この本部がイスラエル軍の猛攻撃を受けて大破、内部にいた約二百人が尋問のため連行された。「ヤセル・アラファト議長やジブリル・ラジューブ治安警察長官に危害を加える意図はイスラエルにはない。ラマラの議長府や治安警察本部に逃げ込んだテロのリーダーたちを逮捕するのが目的」との声明をイスラエル政府は発表した。 実はその裏で、情報工作のドラマが展開されていた。主役は、治安警察本部、正式名称「予防治安部隊」の指揮官であるラジューブ氏である。ラジューブ氏は火に包まれた本部から米中央情報局(CIA)の連絡要員に通報、ほうほうの体で数十人の側近らとともに難を逃れたのだという。 米紙ワシントン・ポストのコラムニスト、ジム・ホーグランド氏によると、CIAが行なったこの工作はいわゆる「アセット(情報源)の保護」だった。 ラジューブ氏は一九五三年、西岸のヘブロン近くにあるドゥラの生まれ。パレスチナ解放機構(PLO)主流派最大組織のファタハの活動家で、イスラエル兵の輸送車に向けて手投げ弾を投〈とう〉擲〈てき〉して捕まり、七〇年終身刑を言い渡された。のべ十七年間の牢獄生活中に、ヘブライ語と英語を学んだ。捕虜交換で釈放された後、第一次インティファーダ(反イスラエル闘争、八七―九三年)中の八八年にも捕まり、レバノンに追放された。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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