逆張りの思考

メイド・イン・チャイナの意味が変貌する

執筆者:成毛眞 2016年11月17日
タグ: 中国 日本

 ナインボットミニプロを買った。セグウェイと同様、立ち乗りの電動二輪車だ。体を前に傾けると進み、後ろに体重をかけると止まる、例の乗り物だ。100万円を超える商品だったのだが、ついに10万円を切ったので、買ってしまった。ヨーロッパの観光地にはこれに乗って名所旧跡を回るツアーがある一方で、今のところ日本の公道では原則として乗ることが許されておらず、したがって私も、家の中で乗っている。
 しかしながら、最高速度毎時18キロ、1回の充電で30キロ走行できるスペックは外で試してみたい。かつてのゴーカート場のようにナインボット専用の場所が開設されたら乗りに行きたいし、ナインボットに乗ってプレーするホッケーやラクロスなどがあったら見に行きたい。むしろ、フットサルコートのように、ナインボットスポーツコートを運営する人たちがなぜ出てこないのか不思議だ。かなり面白いスポーツになると思う。
 もうひとつ、買ったものがある。ドローンだ。ドローンはこれまでに何機か買っているが、ファントム4という新型では、過去のドローンでは欠かせなかったユーザーによる微調整が不要になり、最初に飛ばすときにコンパスのキャリブレーションをするだけになった。指定したものを追尾し続ける能力がある上、バッテリーが切れたりGPSの電波が届かないところへ飛んでいってしまったりしても、自動的に飛び立ったところへ戻ってくるのだ。
 実はインスパイアワンという上位機種もほしいと思っている。これは4K撮影が簡単にできる。操縦と撮影を手分けできるので得られる映像のクオリティは極めて高い。飛ばせる場所が限られるのが難点だが、しかし、これがあれば個人が撮れる映像の質は高くなる。
 さて、ナインボットミニプロを作ったナインボット社は、昨年、米企業・セグウェイを買収したが、中国の総合家電メーカー・シャオミの傘下で、上海に本社を置く新興ロボット企業だ。ドローンの製造販売をしているのはDJIという会社で、こちらは深圳に本社がある。要するにどちらも中国企業なのである。
 メイド・イン・チャイナといえば、壊れやすい・センスが悪い・安っぽい・コピー商品が多いなど、およそネガティブなイメージが付きまとっていたが、今は時代の先端を行くようになっている。一方で、残念ながら日本からは、ナインボットやドローンのように私の財布の紐を緩めるような商品は生まれていない。すでに、中国は日本を追い越しているのだ。
 メイド・イン・チャイナはもう、そのパッケージからして美しく、堂々としている。ちっとも安っぽさがなく、開封する前からわくわくさせてくれる。おそらくは世界の工場として、パッケージにも手を抜かないトップブランドの商品作りに携わっているうちに、美についての意識が高まっていったのだろう。それにくらべると我が国の商品のパッケージは、効率化はされているが楽しくない。

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執筆者プロフィール
成毛眞(なるけまこと) 中央大学卒業後、自動車部品メーカー、株式会社アスキーなどを経て、1986年、マイクロソフト株式会社に入社。1991年、同社代表取締役社長に就任。2000年に退社後、投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立。2011年、書評サイト「HONZ」を開設。元早稲田大学ビジネススクール客員教授。著書に『面白い本』(岩波新書)、『ビジネスマンへの歌舞伎案内』(NHK出版)、『これが「買い」だ 私のキュレーション術』(新潮社)、『amazon 世界最先端の戦略がわかる』(ダイヤモンド社)、『金のなる人 お金をどんどん働かせ資産を増やす生き方』(ポプラ社)など多数。(写真©岡倉禎志)。
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