やはり2017年最大の注目人物はこの人か(C)AFP=時事

 

 フォーサイト編集部です。新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

 本年も昨年同様、新年を迎えるに当たり、執筆者の方々に「2017年の注目点、気になること」をお聞きし、それを【地域編】と【テーマ編】にまとめてみました。こちらは【テーマ編】です。お楽しみください(順不同。タイトルをクリックすると、それぞれの執筆者の記事一覧ページにジャンプします)。
 

【中国経済・後藤康浩】「中国版サブプライムローン危機」の現実味

 中国経済は不動産バブル崩壊への懸念が再び強まっている。中国では、不動産価格は危険な高値圏に入ると引き締めで沈静化というパターンの繰り返しだが、今回は不動産開発業者や投機に走った国有企業の債務も危機的な水準になっており、大きな倒産などが起きれば貸し込んでいた金融機関の経営が揺らぎ、「中国版サブプライムローン危機」が起きる可能性がある。

 過剰生産能力が世界から非難を浴びる中国の鉄鋼など素材産業は、2016年春以降、回復基調にあり、世界の鉄鉱石、原料炭も急騰したが、それもインフラと不動産の追い風であり、「中国版サブプライムローン危機」が現実化すれば、再びどん底に落ちる。2017年も中国が世界経済を揺さぶり続ける年になるだろう。「習近平政権は秋の党大会までは好景気を維持させる」という意見も多いが、中国の不動産バブル、金融市場の危機は政府が管理できる水準ではないだろう。

 

【企業経営・杜耕次】厳しさ増す“重電御三家”

 日立製作所、東芝、三菱重工業の“重電御三家”の経営環境が一段と厳しさを増しそうです。重電分野の世界市場では米ゼネラル・エレクトリック(GE)、独シーメンスという2大強豪がリーマン・ショック以降、M&Aや事業売却で体質改善を一気に進め、世界の電力・エネルギー用機器設備でのシェアを大幅に引き上げました。とりわけ世界で需要が急増している風力発電など再生可能エネルギー分野では圧倒的な強さを見せつけ、それらのプラント・エンジニアリング市場では他のライバルメーカーを寄せ付けません。片や、もはや「キワモノ扱い」の原発に官民そろってこだわっている日本勢はジリ貧一方。昨今取りざたされている核燃料事業や原子炉製造の再編・統合にとどまらず、日本勢3社は解体的なリストラを余儀なくされる可能性が高まっています。

 

【日本社会・西川恵】「安全、安心、清潔」で外国人観光客は増えるか

 世界でテロが吹き荒れ、ポピュリズム(大衆迎合主義)が猖獗(しょうけつ)を極める中、日本の政治、社会の相対的な安定性に国際社会の注目が集まると思われる。

 なぜ日本はテロやポピュリズムと無縁なのか。格差は拡大し、貧困層は増え、少子高齢化など不安材料は多い。にもかかわらず社会にある種の安定と落ち着きがある。少ない移民、長期の低失業率、同質的な社会、国民を統合する皇室の存在など、挙げれば幾つか思いつく。ただ理由はそれだけなのか。安全、安心、清潔は日本の揺るぎないトレードマークとなって、外国人観光客の誘致にも大きなプラスとなる。

 

【国内景気・磯山友幸】いよいよ消費に火がつくか

 低迷が続いている消費の底入れはいつか。2つの指標に着目している。1つは新設住宅着工戸数の推移。2016年度に入って以降、5月を除いて11月まで8万戸を超えている。消費増税を控えた駆け込みラッシュにわいた2013年度に迫る勢いで、過去2年の実績を大きく上回っている。もう1つが賃金の上昇。有効求人倍率はバブル期並みで、雇用者数も増え続け、人手不足はピーク。最低賃金もジワジワと上がっている。これまで毎年上がってきた厚生年金保険料率の引き上げが遂に2017年9月に終わる。可処分所得が増えれば、いよいよ消費に火がつくか。

 

【企業経営・大西康之】「東芝粉飾決算」の事件化と「上場廃止」

 東芝は、2016年末ぎりぎりに、米原発サービス子会社を巡って新たに数千億円規模の減損発生が明らかになった。2000億円を超える粉飾決算に巨額減損が加わり、債務超過に陥る可能性もある。注目点は、検察による事件化と東京証券取引所による上場廃止がなされるかどうか。これらが見送られるようだと、「日本では粉飾はやった者の勝ちで、株主や顧客の利益は守られない」という悪しき前例を残すことになる。

 

【インテリジェンス:春名幹男】「トランプ登場」で世界秩序は変わるか

 ドナルド・トランプ氏の米大統領就任で、世界はどう変わるか、に最も注目しています。

 自己中心的な彼は恐らく、あらゆる問題をゼロベースで考えるでしょう。「1つの中国」に疑問を提起したのもその1つです。

 21世紀に入って世界は変わりました。米国は、中東諸国を破綻させ、ロシアと中国を結託させた上で、両大国を敵に回してしまいました。トランプ氏が狙うのは、ロシアを米国に引き寄せ、中ロを分断することです。

 しかし、彼にどれほどの手腕があるか。そもそも国内を抑えられるのか。疑問だらけです。果たして世界は、地政学的に新境地が開けるかどうか、注目したいです。

 

【国際機関:鈴木一人】新国連事務総長の手腕が問われる

 2017年は10年ぶりに新たな国連事務総長を迎える年となる。国連史上初めての事務総長選出プロセスの透明化によって、全世界から見守られる中で選ばれたアントニオ・グテーレスがどのような国連の舵取りをするのかが注目される。特に重要になるのはシリア問題への対処と、トランプ新政権との付き合い方だ。米英など国連を通じた国際秩序形成を進めてきた常任理事国が内向きになることで、国連安保理はさらに停滞する可能性もあるが、グテーレスはそれらの国を動かし、国連を国際社会で意味のある存在にできるかどうか。事務総長選出プロセスで見せた能力の高さを発揮できるかに注目している。

 

【古代史:関裕二】天皇家の存続と政治利用

 おこがましいもの言いかもしれぬが、天皇家の行く末が案じられる。 

 民進党は女系天皇や生前退位(正確には「譲位」)を認めるべきだと主張しはじめている。保守系の論客や政治家は、これを認めると、天皇が政治利用される恐れのあること、天皇家の存続そのものが危ぶまれると反発しているが、議論が深まる点に関しては歓迎しておきたい。あらゆる角度から、アイディアを出し合わねばなるまい。

 ただし、「天皇とは何者なのか」「なぜ、権威を保ち続けたのか」「天皇に手をかければ恐ろしい目に遭うと信じられているのはなぜか……」などなど、天皇の正体は、いまだに解明できていない。ヤマト建国から今に至るまで、原則として天皇に権力は渡されなかったところに、大きな解けない謎があり、「天皇がどうあるべきか」の議論も、噛み合わない。

 答えはいたってシンプルだと思う。日本人にとって神とは、大自然そのものだった。そして、神とつながる天皇も、大自然のように恵みをもたらし、時に災難(災害や祟り)をもたらす。この天皇の本質を知っていれば、天皇を巡る議論も、大きく進展すると思うのだが……。

 

【遊民経済学・吉崎達彦】「カジノ解禁法案」は成立したが……

 サプライズの2016年から不透明性の2017年へ。注目点は数々あれど、わが遊民経済学における最大の関心事は、昨年臨時国会で成立した「IR(統合型リゾート)推進法案」、別名「カジノ解禁法案」のその後である。

 IR推進法案は、議員立法によるプログラム法案であった。同法の可決を受けて、年明け早々にも内閣総理大臣を本部長とするIR推進本部が政府内に設置され、年末までにIR実施法案の国会提出を目指すことになる。この政府法案が可決されてから、ようやく設置区域や事業者の認定作業が始まる。さらには、統合リゾートの建設にもかなりの日数がかかるので、運営開始は早くても東京五輪後の2022年頃となるだろう。

 カジノ解禁に必要な法律や政令については、2014年に内閣官房に設置された検討チームが、あらかたの仕事を終えていると伝えられている。ただし昨年の臨時国会では、「依存症対策」が争点になった。どんな具体策が打ち出されるか、世間の関心は高いだろう。

 今日のIT技術をもってすれば、「ワケありギャンブラー」の入場を規制するのはさほど難しいことではない。それこそ入国審査方式で認証チェックすればいい。しかるに現状のギャンブル施設、競馬場やパチンコ店にその手の関門は一切存在しない。依存症対策の議論をしているうちに、競馬場の入口で「マイナンバーを記入せよ」などと言われるようになったりしないだろうか。ギャンブラーとしてはちょっと心配である。

 

【外国人労働者:出井康博】「留学生30万人計画」と外国人犯罪

「外国人留学生30万人計画」の行方と外国人犯罪の関係に注目している。同計画は達成目前だが、それは出稼ぎ目的の“偽装留学生”が急増しているからだ。その中心を占めるベトナム人による犯罪も増加が著しい。刑法犯の検挙者数では、中国人を抜いて国籍別でトップとなった。“偽装留学生”たちは「日本に行けば稼げるから」とブローカーに騙され多額の借金を背負い来日し、低賃金・重労働の仕事で都合良く使われる。そうして稼いだ金は日本語学校や大学に学費として吸い上げられ、借金は一向に減らない。その挙げ句、一部の者が犯罪に走る。日本中を震撼させるような凶悪な犯罪がいつ起きても不思議ではない状況だ。「人手不足」を盾にして、いつまで政府は事態に目をつむり続けるつもりなのだろうか。

 

【東日本大震災:寺島英弥】「東京五輪熱」の陰で「復興遅れ」は深刻化する

 準備は迷走し、関係者の思惑は錯綜し、経費だけが巨額になる2020年東京オリンピック。「復興五輪」とは名ばかり、何のための誰のための祭典なのか分からなくなった。被災地・東北からは、憤り、あきれた思いを通り過ぎて、いまだ「成長神話」に国民や経済をしがみつかせる安倍政権の延命剤に見える。それでも東京五輪待望論は2017年、政府の音頭やメディアの盛り上げ、便乗景気や建設ラッシュを通して加熱していくだろう。その陰で東日本大震災と福島第1原発事故が忘れられることを懸念する。

 2017年3月で被災地は、大震災から丸6年を迎える。福島の原発事故被災地の各自治体では3月末で避難指示が解除される(帰還困難区域を除く)が、正念場はそれからだ。飯舘村では、除染後の農地に山砂が覆土されて砂漠のようになり、中間貯蔵施設の整備遅れから、水田などの仮置き場に除染土袋が山積されたまま。農家の大半は「風評」を恐れて生業再開を諦め、帰還する開拓者のような人々は、支えとなる共同体の喪失を危惧する。廃炉も汚染水対策も道筋や成果が見えず、風評と解決の責任を負わされた被災地の南も北もいまだ、地場産業の市場を回復できず、人口流出が止まらない。政府による災害公営住宅建設は進んでいるが、やはり共同体を失った住民の孤独死、高齢化と健康悪化、貧困、PTSD(心的外傷後ストレス障害)など心の病の多発がすでに報告されている。支える人の不足と福祉予算削減は深刻だ。復興予算によるハード面の被災地再建は進んでも、人も活力も戻らぬ現状で「復興」を感じる人はいない。それを、東京五輪熱の向こうにどう伝えられるか、伝わるか。

 

【国内政治・野々山英一】真の主役は「トランプ」と「小池百合子」か

 2017年の政治は、「永田町の外」にいる2人が主役となりそうです。1人は間もなくアメリカ大統領になるドナルド・トランプ氏。対日政策も含め、従来のアメリカの外交、安保、経済戦略を抜本的に変えようとしているトランプ氏。安保法制を整備して、米国との一体化を進めてきた安倍政権にとって、トランプの「暴走」に右往左往する1年になることでしょう。

 もう1人は小池百合子東京都知事。彼女が昨年夏以降の勢いを維持して「小池新党」を結成するかどうか。自民党候補の出る選挙区に刺客候補を大量擁立すれば、まさに2005年の郵政選挙の再来となるでしょう。都議選で自民党が大きく後退すれば、安倍首相の衆院解散戦略など国政にも大きく影響しそうです。

 

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フォーサイト編集部 フォーサイト編集部です。電子書籍元年とも言われるメディアの激変期に、ウェブメディアとしてスタートすることになりました。 ウェブの世界には、速報性、双方向性など、紙媒体とは違った可能性があり、技術革新とともにその可能性はさらに広がっていくでしょう。 会員の皆様のご意見をお聞きし、お力をお借りしながら、新しいメディアの形を模索していきたいと考えております。 ご意見・ご要望は「お問い合わせフォーム」や編集部ブログ、Twitterなどで常に受け付けております。 お気軽に声をお聞かせください。よろしくお願いいたします。
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