マネーの魔術史 (8)

紙幣発行論者ベンジャミン・フランクリン

執筆者:野口悠紀雄 2017年7月20日
エリア: 北米
(C)AFP=時事

 

 アメリカ独立宣言の起草者の1人であるベンジャミン・フランクリンは、多才な人だった。

 2年間の学校教育を受けただけで、印刷見習工からたたき上げた。避雷針などを発明したし、凧を用いた実験で、雷にプラスとマイナスの極性があることを発見した。さらに郵便制度を改善し、消防隊、図書館、病院などを作り、ペンシルバニア学術院(後のペンシルバニア大学)の設立にも貢献した。彼は、これから述べるように、アメリカにおける紙幣の発行にも貢献している。

 イギリスの植民地であるアメリカには、当初、独自の通貨はなく、イギリスやスペインの通貨が使われていた。しかし、1690年頃から、植民地政府が紙幣(植民券)を独自で発行し、流通させるようになった。

カテゴリ: 経済・ビジネス 社会
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執筆者プロフィール
野口悠紀雄(のぐちゆきお) 1940年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、大蔵省入省。1972年エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授などを経て、現在、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論。1992年に『バブルの経済学』(日本経済新聞社)で吉野作造賞。ミリオンセラーとなった『「超」整理法』(中公新書)ほか『戦後日本経済史』(新潮社)、『数字は武器になる』(同)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞社)、『マネーの魔術史』(新潮選書)、『AI時代の「超」発想法』(PHPビジネス新書)など著書多数。公式ホームページ『野口悠紀雄Online』【http://www.noguchi.co.jp
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